日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

あらばしり(14) なりたいもの

 小学生のころ「なりたいもの」といえば。運動ができなかった、女子にモテなかった。じゃあ、できるようになりたいかといえば、ちょっと違う。そういうのは、「自分はそういうタイプではない」から、考えてもしょうがない。単純で、手の届きそうな感触の「望み」があった。皆さんあったんじゃないかと思う。

 サイダーとかコーラとか飲めなかった。あと辛いカレーも食べれなかった。炭酸と辛いものに躊躇なくいけることが、自分の「成長」だと思っていた。「人には言ったら恥である」ことも自覚していた。いっぱい食えるとか、早く走れるとか、今なら「ジェンダー圧の強い環境に影響を受けた」とか分析されそうだ。

 確かに当時のCMの演出そのまま影響を受けていると思う。コーラ飲んだり、体に悪そうな(ジャンクフード、アルコール、たばこ)ものを摂取することがカッコいいとなぜか思っていた。「環境が価値観を決める」というのも、そのとおり。でも、もっと「どうしようも無いもの」もあるでしょう。3kg前後の体が10倍20倍に巨大化する。ジェンダー関係ない。誰もが大きくなってしまう生き物だから「大きくなれば嬉しい」、成長とともに食べる量が増えるから「何でもいっぱい食べられるようになりたい」。

 炭酸と辛いものと、あと「どこでも寝られる人」になりたかった。「どこでも寝られる/寝てしまう」という友だちの話を聞くと、まず羨ましい。このかた病的な不眠になったことはないけど、いろいろ「整わないと」寝れなかった。豆電球もだめ、置き時計の音が気になるとかマクラが合わないとか、「この順番で寝返りする」とか。ステルス生物兵器、すなわち「蚊」が出たら終わる。小さいころは、田舎の、夜中は「ほぼ無音・暗闇」の中で生活していたからかもしれない。

 学生時代の家賃8千円の古いアパートは、隣がトラックとかがよく走る道だった。夜中にトレーラーが定期的に通過して家が揺れた。夏は玄関を全開にして風を通さないと暑くて生活できない。こんな話を「自虐ネタ」に使っていたけど、内心は「モノともせずに寝てる」という「成長」を感じて充実していた。蚊が好むといわれる血液型なせいか、夏の夜は集まってきた。しばらくするとヒザから下に3,4匹食いついたままで入眠できるようになった。掻いたりしないからか翌朝かゆくなることも少ない。気のせいか、蚊の方もだんだん寄ってこなくなった。蚊の方でも「動物の抵抗をくぐり抜けて血を吸いたい」というのがあって、「炭酸きついけど飲む」みたいな。相手が無心で相手にしないと「張り合い」がなくなるのかもしれない。蚊だって「成長」したい。

 施設に就職して夜勤は大変だったけど「どこでも寝れてるぞ」という密かな成長を感じていた。ヘルパーでは毎回寝床が変わって刺激的だった。ただ、未だに「山小屋」でまともに寝れたことがない。でも山小屋で「成長」しようとは思わない。あの管理された感じや、集団行動、同調圧力が気に入らない。「いつでもどこでも寝られる」は、「与えられた場所で」だったのが、「選択肢を増やす」方向になっていた。

 何十年ぶりにテントと寝袋を引っ張り出して、旅先・出張先でキャンプしている。キャンプが好きでもない。焚き火もしないしコンビニのパンを食べる。「どこでも寝たい(決められたくない)」だけなので、合間に泊まる東横インが5つ星の極楽に感じてよい。