日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

介助者を6年やってみて(10) Y先輩の投稿を読んで

 昔、入所施設に住んでいる友人や知り合いが風俗を利用するボランティアに精を出していた(深い意味はない)時期がある。多い時は毎月くらい夜勤明けでフラフラでも少し意地になってやっていた。利用しやすいホテルを探して、山の上の古いラブホテルに手動車イスを押して登った。疲れて眠くて倒れそうで、隣の部屋が開いていたのでこっそり入って仮眠したこともあった。というのは今だから書けるし、逆に今は性労働の問題もあって批判も出そうだ。 

 そのモチベーションは、彼らの性の悩みが「身につまされる」からだった。当時は、彼女もいなくて空しくなる時もあったけど全然問題ない。平気だよ人生楽しいよ。ただの生理現象で落ち込んだり自尊心まで削られるのはくだらないから「処理」しちゃえばいいんだよ。 心で泣きながら車イスを押していた。 

 「ケア・支援」につきまとう「自己実現・自己満足・自己肯定感」等々のことだ。個人的にはポジティブに捉えている。動機としては不純だけど、モチベーションの源泉としては純度が高い。埋蔵量は無限だ。もっと昔の自分の兄の介護中、話もしなくなった兄を見て、家族は想像を膨らませた。「兄貴はこうしたかったんじゃないか」そう考える時間は充実していた。ふと、寝ている兄がカッと目を見開いて「オマエ何勝手なこと言ってんの?」と言われるイメージが浮かんで、我に返った。 

 自分の価値観や願望を、何も言えない相手に投影してるんだよな。そのころ、小規模の居場所づくりが注目を集めていた。「宅老所」や知的障害者の地域での取り組み。その支援者の代表の名前で発信することが増えた気がする。現場は大変だけど、支援者の「思いを叶えてくれる」人たちだよね。カリスマ社長みたいになれる。そういうのを横目に「不純でイイね!」と応援してた(ちょっと憧れていた)。 

 岩橋さんが時々書いている。「たこの木は遠くの人から評価されるけど、近くの評判が悪い」。多少年季の入ってきた「たこの木フォロワー」としては、そのギャップを埋めたい。近づいたら「やっぱり良かった」となって欲しい。Y先輩が先月書いた原稿が実に危うくて、近づいたら「心身に悪い影響が出る」、心霊スポットみたいになりつつある。これはまずい。最近のいくつかの出来事から「仮説」を考えてみた。人の分析などできないし、されたら嫌なことなので今回だけ。自称外部監査役のつもりで書く。 

 岩橋さんには「アンチ全体主義」がDNAレベルで組み込まれている人だと思う。何か大きな流れが生まれようとすると、生理的に受けつけない。国の政策でも現場レベルでも。「みんな知ってるよ」と言われそうだけど、重要なのは、当事者とか支援より「ずっと前の段階」でそうだということ。 

 よく「バランスを取る」と言う。議論をし尽くす前に、何となく1つの方向性に全体が向かい始めると、別の視点を提供する。「方向性を否定しているのではなく、より良い議論と判断のための参考意見だ」と。でも、私から見ると、ほぼ「拒否権」に近いものを持っている人がそれをしたら、それは「却下」なんだけどね。もちろん権力や権威を振りかざす人ではない。一方で、言われた側は「ここで方向性を決めても、きっと延々とバランスを取られ否定され続けるんだろう」と実質的・拒否権行使と受け取る。 

 根拠が薄かったり、古すぎる事例だと(Y先輩’s 15年前の発言。。)良くないし、いくつか見聞きした話をします。そもそも個人の性質を他人がとやかく言うことではない(けどやってる)。先日の連続講座の交流会を聞いていて、岩橋さんも「なんでこうなるんだ」と悩んでいるようだったので続けます。 

 交流会での「コロナ対策」の話題で「一方向に強制する雰囲気」が許せなくて必死に抗ったエピソードを話していた。これじゃ周りは大変だなーと苦笑いしながら聞いていたが、わりと無茶な理屈を押し通す岩橋さんもしんどそうに感じた。「そうせざるを得ない」何かが突き動かしているように。当事者が〜だから、と言っていたけど多分違う。当事者や支援とは別のレベルから出ている。本能のような。 

 基本的には働きやすい環境を整えようとしてくれていて、介助者なりたてのころに、お店で大騒動に巻き込まれた時や、虐待の調査で大変なときも丁寧に話を聞いてくれた。なのに時々「やっぱりヘルパーは使い捨てなんだな」と感じる時がある。現場が疲弊しきっている「ここでバランス取っちゃダメだろ(しかも実質拒否権)」という時に逆張りかますのでそうなる。 

 利用者が家から居なくなって慌てて捜索した時のこと。地元で支えきれなくなって、多くの介助者は車で1時間のところから来る。支援チームは、以前岩橋さんから「昔居なくなった時は駅でガラスを割って警察が来た」と聞いていて、同じように孤立無援な状況になっていたら心の傷も大きいだろうと思って1時間かけて駆けつけて探し回った。さすがの岩橋さんは行動を予測して第一発見者となった。 

 その夜のZoom会議で顛末を聞いた。曰く「みな大騒ぎしすぎ。自分は土地勘があるし、彼のことを知っていればどうするか予想がつく」。聞いてられなくて席を外した。心配して駆けつけて、手さぐりで探し回っていた支援者たちはどこに行った。「どこを探せばいい」とか簡単な指揮をしてくれたらいいのに。本人の過去を知っていて土地勘があるのは岩橋さんしかいないのに、自分の手柄の話だけをしている。チームの大半に土地勘が無い理由は何だっけ。力を出したり引っ込めることで影響力を誇示するスタイルなのか。 

 でも今は自分なりに理解できる。それぞれが考えること無く、誰かの指揮で動く、というのが耐えられないんだと思う。だからリーダーはやらないし、生理的に受けつけないんだろう。じゃあフラットにメンバーに一任できるかと言えば、アンチ全体主義は理屈でなく本能なので、メンバーに権限や責任が託されることはなく、気になって口をださずにいられない「マイクロマネジメント上司」になる。「あなたはどうしたい?やってみたらいい」と言われても、実態は良くも悪くも「普通の会社」なので、選択肢も裁量も少ない。お互い苦しいと思う。 

 とはいえ、たこの木は、これまで上手くやって来ている。事業の「株分け」をしたり、大幅減算もいとわず制約の少ないサービスを選ぶ。こんな「骨を切らせて肉を断つ」式を連発できる所はないと思う。心配した人が集まってきて何かと回っている。たこの木の魅力は健在だ。個人的に「一人たこのき」を提唱している。その代わり、何かやるときは、いつでも手伝います。「一人たこ焼き」みたいで語感がよい。 

 風俗介助してた時に聞かれたら「障害者の性」について、遠くを見ながら語っていたかもしれない。あったかもしれないが半分は行かない。あのモチベーションは、自分のコンプレックスと単純に楽しいこと。ラブホテルで出くわすカップルの、ムードをぶち壊すのが実に愉快だった。やる気のない自分で半分、名の知れた立派な支援者だって1割や2割は不純な動機があって、それが分かれば楽になるのじゃないかと思う。カップル爆発しろ!たこの木も爆発(解体・一人たこのき)だ〜