日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

あらばしり13(雑談) 岡山県「犬島」3時間滞在プランのご案内

 「瀬戸内」の海を見てほしい。見に行けなくても「西日本に特別いいところがある」って知っていてほしい。なんだけど、ここに限らず人に勧めるとだいたい嫌がられる。どうしても「押し付け」感が出るみたい。自慢や自分語りを極力入れずに勧められないか。
 来年、5年後、世の中どうなっているかも分からない。コロナ前なら「県外に出られない」なんて意味が分からない。でも、それが実際起きていた。今の黒海のように瀬戸内が海上封鎖されるかもしれない。できるだけのことをしておきたい。
 瀬戸内の島々が重なって見渡せる場所。できれば島の1つに渡るのがいい。岬や広い海岸、または高い所、展望台や大きな橋に車を停めてもいい。広い瀬戸内海の中で、島々が集まって重なって見えるのは「小豆島」から西は「尾道」や「しまなみ海道」までになると思う。それでも幅が200kmはあって、どこかに絞らないと旅のプランが立たない。
 夜行バスで香川県は「高松駅」に着く。駅前に「フェリー乗り場」がある。昔、岡山までの「宇高連絡船」というのが列車を船で運んでいたという。フェリー港はアクセスの悪い町外れにあることが多いから、とにかく便利だし、旅先で朝の満員電車やバスに乗らなくていい。後で書くけど、瀬戸内では「海がインフラ」という不思議な感覚があって、「公道、公共交通機関」みたいなね。高松駅は、それをよく表していると思う。
 夜行バスが着いて高速船が出るまで1時間ある。朝から開いている讃岐うどんの店で朝食をとる。「アートの島」で有名な「直島」に行く。このパターンを4回くらいやった。先週も行ってきたので、こうやって盛り上がって記事を書いている。要は、近年の「地方アート祭り」ブームに乗せられた「良いお客さん」である。そこは認める。
 「地域アート」には批判もある。いいおじさんが無批判に流行りにのって人に勧めてていいのか?今回の旅で、そういうのが吹っ切れた。アートも良いんだけど、アート抜きでも瀬戸内はやっぱり違う。ずっと「釣り人」がうらやましかった。突堤の先で、突き出した岩の上で、危ないテトラポットの陰で、半日たたずんでいても不審に見えない。そこら中にある安い釣り民宿に泊まれる。深夜や早朝に海岸をうろついても多分通報されない。地域アートが「釣り人免責」と同じものになる。それがないと人口100人の小さな島に一人では行けない(その昔は「一眼レフ免責」もあったかもしれない)。
 「小豆島」は今でも好きな場所で、小学校の修学旅行先だった。20年後に島を歩いたら、やっぱり独特な穏やかな雰囲気あって良いところだった。島一面にオリーブ畑で、お土産がチョコレート(オリーブ入りのホワイトチョコ)だ。素敵すぎる。加えて、田舎の純朴な少年なりに初の「女子たちと旅行」というのが感性を覚醒させていたみたい。小学4年のときに瀬戸大橋が開通した。30年経った今でも、近くを通ると「人間はとんでもないことを考える」と思う。
 小学4年生が人生で一番楽しかった。友達と遊ぶのがとにかく楽しい「ギャング・エイジ」だとかいう。少し前は「ハレー彗星」が接近し、男子向け雑誌は天体や宇宙ロケットばかり。瀬戸大橋は身近な「科学の勝利」という感じだった。高速道路の下に普通電車を走らせるとか発想がすごい。後でできた明石大橋のほうが単体では大きくて迫力もすごいんだけど、瀬戸大橋が好きだった。小4だから印象が加点されてるけど、それ以上にかっこよく見える。島を踏みつけるように、見下ろすように、なかなか振り切った環境破壊をしているはずなのに、大きな声では言えないけど、調和していてきれいだ。
 3本目の本四連絡橋「しまなみ海道」80kmを一泊して歩いた。当時は体力なくて後半は全身が痛くてフラフラしていたけど、とにかく海がきれいで「次の景色を見よう」と前に進んだ。橋は、じつは脇役で瀬戸内の島と海を引き立ててるのだ、という説ができた。自分語りはそろそろ限界ですか?つまりアートも引き立て役だってことです。
 湖のように波が静か。音量も静か。実家の近くの海は太平洋の海で、まったく穏やかでない。浜辺に30分もいると疲れる。砂浜もいい。アートの島だと花崗岩の黄色い砂が多い。海の青との境目に不思議な色合いがあって見飽きない。湖と違うのは、大型の船も含めて船が行き交っている。早朝は漁船、フェリー、関西の港からの産業用の船。なにより1つ1つの島は「景色の一部」だけではなく、ほとんどは集落や町がある。夜は灯台だけではなく家々の灯りや街灯が海の先に見える。
 遠くに見える島に世界的な建築家や芸術家の作品があるというのも新鮮だけど、それ以前に、遠くに見える小さな島は大昔から「重工業の拠点」でもある。なぜ町があるかと言えば何百人が働く大きな工場があるから。しまなみ海道には造船所があった。アートの島々には金属の工場や廃棄物の処理場がある。もっと昔には石材が一大産業で、大阪城の何百トンという石を切り出していた。重たいものを大量に運ぶには船が一番というのは今も変わらない。
 都会から離れていって、湖や海岸まで来たら人の営みは一区切り、そこから先は余暇で楽しむ場所、という感覚があったと思う。地元の人には失礼な話だけど。中央と辺境という発想が染み付いていたのが、ここに来ると逆転するような驚きと心地よさがある。海は道で、向かう先の制限がないから道より便利なインフラだったんだと。新たな発見ではなくて昔から当たり前のことで、都会にいて忘れていた。きっと「山」もそうだったんだろう。今は『 ポツンと一軒家 』で珍獣発見の扱いだけど。結局、持論を語りまくっていて最初の決心はどこかに行ってしまった。
 高松から直島などに向かうのも選択肢が多すぎると思う。直島だけでも1日で回りきれない。ベネッセの経済圏が膨らんで、定番ルートの決まった古い観光地を回っている感覚になりそうだ。かといって別の島に渡る船の時間を考え出すと1泊でも余裕がなくなってくる。あと高松は新幹線で行けない。

岡山駅から犬島まで

 岡山駅からの方が近いアートの島「犬島」のプランを紹介します。アートがまだ無い頃と、先週と2回訪ねてどちらもすごく良かった。昔は全国でも有数の石材の産地で、大きな銅の工場があって、今はアートの島。すばらしい砂浜もある。旧精錬所跡がアートの目玉施設で面白いんですが、そこは「前座」というもので、その奥の「近代産業遺産・遊歩道」がメインだと思います。登りおりが大変ですが、一番奥の砂浜まで抜けるのがおすすめです。

犬島

 一周歩いて2、3kmの小さな島。人口は40人くらい。3時間で十分楽しめます。船が近づくと、港付近の黄色い花崗岩の奇岩・巨岩が目に入って期待を膨らませてくれるのが、短時間で密度の濃い経験ができるのかもしれない。岡山側からは車しか使ったことなくて断言できませんが、東京から頑張れば日帰りできるのではないかと。せめて別件の用事のついでに「半日使って寄る」とかはできそう。
 ぜったい後悔させません。覚えておいてください。犬島、いぬじま、INUJIMA。(嫌がられるだろうな。。)