日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

(67) 介助者を6年やってみて(2) (起こらなかった)未来、からの代理人

自立生活している利用者さんの身内が亡くなって、本人は葬儀に出席するために実家へ。いつもは場面関係なく声が出て落ち着かない彼も、小さい従兄弟たちが走り回るなか、静かに待っていたという。家族から話を聞いた。「お兄ちゃん」として我慢したのかな、立派だったね。でも時期が悪かった。翌朝、交代のAさんに、つい愚痴ってしまった。

人のお葬式に悪く言いたくないけど。友人が来て子どもが走り回り、コロナ対策の弁当を断って帰りに親族で外食したって。ワクチン打ちたくない人たちなのにね。

いつも親しく話す相手なので同意してくれると思ったら、違った。「友人も大事な人間関係だし仕方ないでしょ」本当にその通り。我ながら冷血なことを言ってしまった。余裕がなかった。その少し前から、早くワクチンを打ちたくて週2回の自衛隊ワクチン抽選に参加して、連続4,5回外れていた。その葬儀は、東京都の陽性者が連日5千人を超え始めて3日目の日だった。不快に感じてることに気づかず、愚痴が止まらない。

しかも「プールにもっと連れて行ってあげて欲しい」とか言うんです。今回のデルタ株は、前までのような対策が通用しない事を知らないのかな。本人は若くて大丈夫でも、介助者を通して、持病や難病持ちの当事者に感染することとか、考えてほしいなあ。

時は移り、次にAさんと会った時に、「雨で一日出てなかったので夜遅い時間に銭湯に行きました」と、前夜の引き継ぎをした。それに対してAさん。じっとこちらを見て、少し変な間があった後で「ふーん、銭湯はいいんだ?プールはダメって言ってたけど」

うーん、えーと、んー、いや、全然良くはないですね(汗)

良くはないけど、22時のガラガラの銭湯で20分くらい黙って過ごすよりも、プールは20倍くらい良くない。感覚的に。でも、どこまでが許容ラインかは、法律もないし「自粛要請」にはっきり書かれているわけでもない。仲の良かったAさんと、こんなことで微妙な空気になってしまうのが残念だ。

 

このウイルスは優秀すぎて困る。「集まって議論したり、飲み食いしながら交流する」という、ヒトが繁栄できた最大の能力をピンポイントで潰しに来ている。一部の人には「軽いカゼ」のような顔を見せつつ、ごく少数の患者と家族に地獄を味あわせて、お互い疑心暗鬼にさせる。一応、社会制度の「最新版」とされる民主主義からまずやられる。テクノロジーの進んだ「宇宙人」が人類を攻めるなら、こうやってまず弱体化させるんだろうと思う。「敵」の手に乗らないよう、言葉に気をつけないといけない。

 

というのが前置きで、やや脈絡ないけど、一度「伊是名夏子さんのJR乗車拒否」の件について書きたかった。何年も前のようだけど、まだ半年も経っていない。昔ならそこまで炎上しないニュースでも、SNSがあらゆる層に普及して、さらにコロナで皆の心がささくれ立っていた。時期が悪かった。援護する人からは、バッシングは「トーン・ポリシング(言い方に気をつけろ警察)」だと受け取っただろう。

 

自分の基準では、「激しい言葉で糾弾ができる」のは、大きな力の差があって、被害を直接受けてる人で「表現を選ぶ余裕がない」時に限る。相手が「白人、男性」といった属性より「国や大企業」という責任の主体がある方がいい。それこそトーン・ポリシングだ、と言われそうだけど、宇宙から精鋭の工作員(=ウイルスという妄想ですよ)が送り込まれている現在、議論はより細かく場面や条件を考慮したものになるのでは。

 

それとは全く「別枠」で、伊是名さんのような発言者を大事にした方がいいと思う。人権とか抜きで、純粋に自分の人生にとってトータルで利益を最大化するために、彼・彼女らの存在が重要だ。これは義務教育で教えたほうがいいんじゃないかと、密かに考えている。お金の投資教育より、こっちの「投資」教育を。

 

辛い目にあって、状況を理解して言いたいことができて、仲間を見つけて改善を求めていく、までには時間がかかると思う。どれくらい?雑に比較対象で、新人社員が一通り仕事を覚えて提案もできるには3年とか5年というから、それにする。ベビーカーを押してちょっとした移動に苦労していた人は、何か言う前に子どもが一人で歩けるようになる。高齢で階段がつらくなってきた人は3年も経てば電車に乗らなくなる。外出自体しなくなる。組織を作って発言できる、主に身体の当事者たちは「未来からの代理人」だと思っている。将来自分が排除されて、声を上げることもできない。その「生まれなかった未来」を彼らは生きている。

 

若干差別的な視点ではあるけど、介護労働者として、それなりに苦労させられてきたので言わせてもらってもいいのではないか。