日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

(46) あらばしり(1) 損切り映画

書くのは少し恥ずかしい。アイドルの映画を観た。好きなわけではない。近年アイドルグループのメンバー数も全体数もどんどん増殖して総人口の2割くらいになって日本が滅びるんじゃないかと、むしろ心配している。

でも観たのは、たとえば「社会現象」として取り上げた硬いものではなくて、純粋に女の子たちを追ったドキュメンタリーだった。劇場に入るの恥ずかしかった。経験ゼロの素人がオーディション合宿を通れば人気グループから即デビューできる。何らか心に傷や闇がありそうな子が集まってくる。

過剰なほどSNS対応していてトイレと風呂以外すべてネット中継される。ツイッターのタグ「#布団監視員」から就寝中の女の子が暗視カメラで見れる。特定されないために、芸名とも言えないランダムなIDが振られる。一人「ウ・ンコ」という名前をつけられた子がいて「ヒドイな~」と思ったけど、他にヒドイことが多すぎて途中で慣れてしまった。

「ホラー映画」だった。ブラック企業、カルト宗教、軍隊の訓練。洗脳して搾取する組織、それに近いけど一見ソフトで暴力的ではない。「加害者」のWプロデューサーに悪意がない。映画もプロモーションとして自分たちで作っている。こう善意で無自覚だと、いつもの日常に悪いものが入り込んでいないか怖くなる。人形の髪が伸びたり壁の中に何か埋まっている和製ホラーの怖さ。

映画は『idol~ああ、無情~』。口コミを読むと「パワハラがひどい」という批判もあるけど「ふがいない」候補生に嘆き「愛のムチ」を振るうWプロデューサーへの共感(心酔に近い)が多い。候補生のコメントも「私が甘かった」と自分を責めつつW氏への感謝の言葉が並ぶ。

でもねヒドイんだな。理不尽だけど理屈はある。食事を残すとクビ。「食事は先輩の稼ぎ。食うべし」なるほど。詰め込んでトイレで吐く。「あいまいな評価基準」はパワハラの基礎。クビになった仲間を慰めていると「後輩は放って自分(身内)のことばかり」と責められ、後輩をかばうと「人の心配してる場合か」。常に強い不安に置かれる。起床後すぐに3キロ走る。敗者復活戦でも走る。途中くじ引きして何か食べる。朝起きてすぐに走ってすぐにだよ。足が速くても、例えばメロンパンが当たると水なしでは地獄だ。「機会の平等」の仕組みという説がある。

かわいい女の子が、涙と鼻水を垂らしながらパンを押し込む。もうナレーションが脳内再生されるようになった。「どんな状況でも美味しく食事することは人脈作りと体調管理に必要だ。芸能界で生きていくために」悲しいかな理解してしまった。

たまたま見た『FNS歌謡祭』に所属グループが出ていて、最後まで見入っている自分に気がついた。この記事を書くためにネットでいろいろ読む。いつの間にか「自分ごと」になっている。悔しいけど「いいね」せざるを得ない。

こうして知らない映画を劇場にでかけて「観なければならない」状況がある。不思議なことに、そんな状況で観る映画にハズレがない。今回も新たな自分を見い出せた。「身近な企業の株から始めよう」という初心者むけのアドバイスがある。ある映画配給会社の株を買って少し上がってドカンと落ちた。損切りがヘタで「塩漬け」になり思い出したくもないが、年に数回「鑑賞券」が届く。年間約1万円以上にもなる。お得かといえば株の損失はケタが違う。少しでも損失を減らしたくて予定を立てる。券の期限もあって、観れるものを観るしかない。

当初タイトルを「共同決定映画鑑賞」としたけど用法に自信がない。自分一人で決めたものは、それは自由だけど案外つまらない。その実感はある。アイドルの食わず嫌いも解き放ってみようか。