日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

(27) 多摩スケッチ「吉祥寺」

ハトが巣を作ってしまった。

どうも無気力だ。引っ越して4ヶ月経つ。出窓の台の電子レンジはコンセントが抜けたまま、ものを温めず1日陽に当たっている。片付ける気力がない。「アラフォーの危機」と5月病がいっしょに来た。先週は雨に濡れて体が冷えきった。今の仕事に年度はあまり関係がない。5月病は気候が原因説、を支持する。

「巣を作る前に対策を」お隣から数日おきに要望が来ていた。ハト避けのヒモを数メートル測って切ったところで投げ出す。小枝をくわえた「平和の象徴」が堂々と巣作りを始めていた。

口にしたことは現実になる。「2年くらいヘルパーやって、それで40になるから何か新しいことやる」心配顔の知人に将来の見通しを話した。2年経って何もしてないと、自分の言葉に追い詰められる。言わなければよかった。

小ざさのようかん。前日から並んで買う「幻のようかん」は本当だ。そして、日によっては締切10分前でも買えるのも本当だ。ボランティア行列管理チームがいる。管理業務が優秀すぎて客と揉めるのも見かけ た。ネットの噂そのままだ。常連さんが言うには、前日から待つのは1人いるかいないか。初めての人、4倍の価格を付ける転売ヤーも並ぶけど、多くはお互い見知った常連どうし。管理までしないけど、顔見知りと交流を楽しみ、初心者を助ける。

「銀座のビルの1本裏に入れば義理人情のまち」昔、東京に「奉公」に出されたという女性の言葉。東京に出ると聞いて励ましてくれた。東京は冷たいというけれど、そんなことはないよ。

汚れるから敷いて、と新聞や買い物袋が渡される。「自転車は8時までならツチヤさんとこに置けるよ」そのツチヤ商店が開店準備を始めた。すみません、どかします。「いいよ、ゆっくりでいいから」こちらに来てから、街で知らない人と話すことはあまりない。便利なのでその必要がない。急に話しかけられても返事がうまくできない。東京が冷たいのではなくて、自分からそうなっていく。

いまいち調子が出ないまま名古屋へ出かけた。以前お世話になった方の「偲ぶ会」に参加した。500人という人数で、どれほど慕われていたかわかる。その中で、いわゆる「先生」も多くて、自分には場違いな雰囲気がある。

押しかけたわけではなくて一応声はかけてもらった。ワーカホリック気味の事務局さん。こんな末端まで連絡してたら体こわすよ。それで、思い切って出てきた。5月病の治療にもなるかもしれない。

その人、延藤先生は、建築家としてあちこちの大学で教えながら全国・海外での「まちづくり」プロジェクトを支援してこられた。ポジフィルムのスライド映写機をカシャカシャ動かしながら物語る「幻燈会」が先生の名人芸。世界中の絵本を引用するというアナログな手法でイメージをふくらませる。チラシを見て来ただけの人が夢と地域の未来を語りはじめる。夕暮れの古民家で幻燈会というのは、五感と古い記憶に訴えるちょっとした「洗脳」みたいだと思った。一度事務所にお邪魔してマンツーで絵本の読み解きをしていただいた。直接の関わりはそれくらいで、自慢でもある。

先生のプロジェクトに顔を出していたころは、他にも地域づくりの話を聞けば出かけて手伝ったりしていた。小さいころから住所を転々としていたのでコミュニティづくりや「地元」に憧れがあった。福祉業界も「地域移行から地域づくりへ」というブームが来ていたころだった。地域に参加させてもらうんじゃなくて、弱ってしまった地域を支えるんだ。人と社会について考え続けてきた関係者の気概を感じるとともに、日陰業界で抑圧され歪んだプライドの裏返しにも見える。