日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

(22) 多摩スケッチ「高尾山」

登りきるまでは歩かない。

そう決めた。即席のルールを頭のなかで繰り返す。高尾山の「1号路」を走って登る。思ったとおり面白くない山だ。石畳とコンクリートの道は広い。軽トラなら通れそうだ。トレイルランの練習に来た。タイツをはいて、最近やっと認知されてきた、小さすぎるリュックを背負っている。そのナリで、きれいに舗装された道を歩くのはみっともない。都心からもっとも近い「山と言える山」だ。登山客は多い。「トレラン流行ってるからね。ブームに乗って始めたぽいね。スタートしてすぐ歩いてるのダサいね」すれちがう登山客の心の声が聴こえる。

いや、初心者だけどレースには出た。神奈川の大山を登った。でも、下りで足が動かなくなった。その時は、多磨霊園浅間山で練習していた。府中の「最高峰」は高さ80m。ちゃんとした山、の険しいトレイルで練習したい。

数年前、昔の同僚が東京に遊びに来た。「友人と高尾山を登る」予定を聞いて不思議に思った。金比羅山の階段を上ってお参りするようなものだと思っていた。ロープウェーに乗って、お土産屋を抜けて。なのに登山靴を履いて大げさだな。

帰りは「6号路」を下った。湿った森のにおい。谷川の飛び石を渡る。慎重に足元を見ていると気配を感じた。前方をふさぐのは立派な杉だ。山や森が近い地方に住んでいたけど、一山越えてずっと奥まで行かないと見られない深い森がそこにあった。

慣れてくると南側の尾根道から登るようになった。高尾山頂を飛ばして尾根を西へ縦走する。人が少ないと思う。山道を走るのは邪魔だから。その「稲荷山コース」はロープウェー乗り場のそばから始まる。すぐに急な階段を登ることになる。調子が出るのは少し走ってから。なので今からきつい時間だ。深呼吸してみたら、ため息のようになった。

登山口が見えた。園児たち一行がコースに入ろうとしていた。慌てて駆け出す。狭い山道で、ちびっ子の隊列に挟まれて動けなくなることがあった。あいさつも良くできる。でも30回くらい「こんにちは」を交わした上に、先生に30人分の交通整理をさせる心苦しさで疲れ果てる。ちびっ子と家族連れ、カップルと学生グループは高尾山頂まで。その先は中高年のエリアとなる。ほとんどが男性だ。

東京の標高600mの先にオジサンの秘密の花園がある。景信山頂上。景色を見に開けた方へ。3mはある重装備のアンテナを立ててブツブツと話してる。アマチュア無線愛好家だ。木陰で人目を避けるように。聞き耳を立てる。「こちらは、週1日寒い日があったのが2日3日と秋の深まりを感じ・・」都心から 波山まで見渡せる。隣のグループは賑やかだ。「嫁さんとブツブツ言いながらも交互に料理をやってるよ」こちらも幸せな疲労感に浸る。

小仏峠にて。ここで引き返すという男性。「2時間で行けるところまで行って帰る。それが今のペース」何歳で登山を始めて、今年で何年目とか遠回しにおっしゃる。計算した。84歳。