日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

『ヒミズ』かすかにネタバレ


「映画って楽シ〜ネ〜♪だからシネマって言うのかな〜」

最初に流れるMOVIXのCMはひどい。毎回思う。声もカバも好きになれないし、何より映画は楽しいばかりじゃない。今日観にきたのなんて特にそうらしいよ。

2012.7.3(tue)ブルーレイ&DVD発売! 映画『ヒミズ』公式サイト

先月車でNHKAMばかり聞いていた。映画紹介コーナーで『英国王のスピーチ』『ヒミズ』『戦争の馬』が挙げられていた。なんともAMらしい・・何だろう・・んーAMらしさって何なのかなー。アングラだけどもっとも正統だし・・「地下」じゃなくて現在の流行という地に着いてないんかな。地上何メートルという。過去、でもあって「今」から自由な雰囲気がある。もちろん庶民の「今の」生活にはべったり張り付いているわけで、それは「今の流行」という点ではなく、「FMラジオを聞くある世代」という短い期間に向けたものでもない。子育て相談、こども電話相談室、健康相談・・人生のスパンに向けられているから「古く」ならない。誰でも参加できる。自由にもなれる。

「演説シーンでかかってる音楽が好き。死んだ母が好きな曲なの」だからベスト3、みたいな雑な説明をとにかく熱心にしゃべってた。それで全部観たくなった。

「英国王・・」はDVD化されてたけど、実家の母が観てて「まあまあ」というので後回しに。「ヒミズ」は放映もされてない。「War Horse 戦争の馬」なんて日本語のタイトルもはっきりしてない未公開作品です。ちょっと気が早すぎるんじゃないの。

原作にはない震災被災者をからめたのは、作ってる中でも賛否両論だっただろうけど良かったと思う。説教臭いのはだめだけど、映画の良いところは「残る」ことで、あの風景と雰囲気を作品の中に留めたのは良いと思った。

どうでもいい感想が3つ。

この映画に限らず、逃げたり、なにか拾うだけでも安易に着衣で水に入るシーンが多いのが気になる。身体的な苦痛も感じないほど感情があふれてる、って言いたいんだろうけど、連発すると薄れる。天気によっては一日じゃ乾かないよ。濡れた服ではほんとうに消耗するよ。ずぶ濡れで楽しいのは中学生まで(映画は中学生だから良いのか)。靴を濡らしたら命取りだよ。山では。山じゃないからいいんだけど。

あと殴りすぎ。ものすごく痛そうな一発、で留められるかどうかが力の見せ所だと思う。細身の中学生をバンバン殴ってエグーい音もしてて、ほとんど傷もなく何度も立ち上がってくる。だんだん効果が薄れてくるし「もう一度観たいと思わない」これ大事。タランティーノ監督の『レザボア・ドッグス』は暴力だらけだったのに5回くらい観た。単調な暴力じゃなかったからだと思う。まあ「心地よく観られる」暴力のほうが問題だけどね。

あと34のおっさんとしては、言いたくないけど、助演の女の子がよかった。イカれた主人公が無茶苦茶やるのは見慣れているけど、彼女の言動は良い意味で裏切ってくれることばかりで面白い。どうにもならないクズ人間ばかり映っていると「早くあの子出てこんかなー」と思ってしまう。(そういえば主人公より悲惨な彼女の親の問題はどうなったの?)

寝て覚めると、監督の「大作・欲」が出たのか背景の壮大なストーリーが単純すぎて気になってくる。「震災で被災者(と日本)大変だけど、スミダ(被災者と日本)がんばれー」という感じ。でも個人的には好きだし良いと思う。単純なメッセージを覆い隠そうと、とにかくメチャクチャでカオスなストーリーががんばっていて良いバランスかも知れない。レンタル屋の「名作コーナー」の作品もかならず何かシンプルなものを持っているから残るんだと思う。

「何も残らせない」「単純に感動させない」努力がこの作品を面白くさせてる。刺激が強すぎて脳が疲れる。劇場を出るとき言葉にできるメッセージは残ってない。要するに「楽しい」映画だった。シリアスでも悲劇でも映画は楽しいものだと見せつけられた。MOVIXのカバは良いこと言ってる。

ラスト前の住田くんが銃を持って池に入るシーンは、もうちょっと何とかできんかったかな。悪くないけどラストだから、わざとらしい感じにしてほしくなかった。