日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

春の旅・マットはない

旅から戻って2日目の朝、のどが腫れて飲みこむのが辛い。昼過ぎから寒気がしてきた。でも意外に、夕方には収まってきた。

「年齢考えずにハードに動いたら風邪ひいたみたい」と同僚に話したら、心配して回復法を教えてくれようとする。「いや、でも楽しかったんで、治りも早いと思うよ」
暖かくなってきて、どこかに出かけたくなった。最近、旅らしい旅をしていない。家族旅行とか、職場の旅行とか、何かに出席するための旅行とか。和歌山の「友ヶ島」というところが面白そう。夕方着いて、島で野宿して、翌日ものんびりして帰ってくる。野宿のスリルはありつつ気楽な計画だ。いつもの寝袋は仙人のところに置いてきた。10年使ってヘタっていることと、取りに行きづらい状況もあり、寝袋とマットを途中で買うことにする。

名駅、駅前アルプスは定休日だった。ハンズのアウトドア・コーナーで寝袋を買う。寝袋はあるのにマットは置いてない。バッグばっかりで「アウトドア」は見掛け倒しだと思う。なんば駅でATMを探す。「旅で日常を忘れる」と言うけど、日常考えないような些細なことに思い悩むことで、考える余裕がないだけの気がする。自分の場合。少し余裕が出てくると、旅先の面倒に、日常にやり残したことの心配が重なってくるので、長旅が苦手です。

電車の旅だと時刻表に行動が決められてしまう。なんばでの滞在期限は25分間しかない。遠くには行けない。高島屋の案内板を見ると地下にスポーツ用品がある。食品売場に降りるけど広すぎて分からない。行列の整理をしていたスタッフに聞くと「私には分かりませんね」と言う。スーツなので社員だと思ったけど。あまりに堂々としていて何も返せなかった。

野宿にマットは欠かせない。なんとかアウトドア用品にたどり着く。服ばっかり。ザックと水筒が見えるコーナーに唯一希望がある。聞いたらやっぱり無い。親切に別の登山用品店を教えてくれる。今までに、期待はずれの客からクレームが来たんだろう。出発したばかりなのに疲れてきた。久しぶりの旅は面倒ばかりだな・・。

「ねえねえ、兄ちゃん」おばちゃんに声を掛けられる。同じ登山用品店を教えられた客で、いっしょに行こうと誘ってくれる。「行きたいんですけど、あと8分で電車が出るんです」「そりゃあかんなあ」

デパートで登山用の雨具を買おうとしたけど気に入ったのがなかった。私ね、着るものは色とかモノを揃えたいの。バラバラじゃ嫌なの。今のんはピンクしかなかった。わたし地味なのが好きやからオレンジがええの。

駅のエレベーターを上がったところで分かれる。この優しい気持ちはなんだろう。オレンジが地味だと個人的には思えないけど、この「人との距離感」はすばらしい。大阪にいたころは面白がっていたけど、本当はこうなりたかったんだと思った。いろんな意味でこの距離感は正しい気がする。大阪のおばちゃんはどこで悟りを開くんだろうか。

いやあ、いいもん見つけたな・・だめだ、と気を取り直す。面白いネタを収集する旅ではなかった。必要なものは手に入っていない。島に着く見通しは立った。マットはないけど草でも集めて寝床にすればいい。島にさえ着けば、あとはのんびりしてればいい。

歴史ある小さな港町「加太」に着く。雰囲気の良い町並みを抜け、出航30分前にフェリー乗り場に着く。船まで20mまで近づいて、やっと「本日運休日」の札が見えた。