日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

I love TOYA 原ちゃん 編

早朝の散歩に出て、眺めのいいところで同僚にメールする。

タイトル:有珠山の火口にいます。
本文:立ち入り禁止の所を早朝から登って来たら、下の所で工事が始まってしまった。どうしよう。怒られる。

休み明けに職場に行ったら話題になっていた。もう32である。いい年して大学生みたいなことやってていいのか、ということらしい。

この火口は、有珠山2000年噴火のさいにできた。22年ぶりの噴火は2000年3月31日に始まった。たぶん手前の青い湖になっているほう。同じ年の8月12日に、ここに立っていた。


アルバイトの同僚と二人で自転車旅行中だった。小樽で盗難にあって仲間意識は強まったものの、終りが見えて日程をこなす単調さと、(盗られて)テントもない野宿生活で心身ともに疲れていた。

「険悪」でもないけど、二人の関係は良くなかった。友だちというより、一人では怖いから「仕方なく」一緒にいる。ここらで刺激的なイベントを入れて旅を盛り上げないといけない。せっかく苦労して北海道まで来た。北海道らしいもの。北海道の「今」。それは有珠山しかない。

この写真を撮った時のことを思い出した。連れの原君が、被災住宅地を埋める灰に登って噴煙を見つめている。「よかった。自分から見に行くなんて。興味持ってくれたんだ。」それで、残り少ないメモリで写真を撮ったんだ。

要するに、僕の希望でルートを変えて強引に連れてきた。「ぜったい良いことあるから。良い思い出作ってやるから」とかなんとか。

そういえば、この日の朝、洞爺湖畔で寝てた時もそうだった。「おい!荒木ちゃん。大変なことが起きた!」どうした、と言いながら少し嬉しかった。友だちっぽいやり取りが戻ってきた。「今度は自転車とられたか!?」「違うって!これ、これ!」

写真は本人の了解がないと載せられないレベルなので止めておく。まぶたとクチビルを何やら強力な虫に刺されたらしく、顔面が腫れて変形していた。「面白いから撮ってくれ」と本人が楽しそうなので撮った。

前の晩のこと。

洞爺湖に着いたのは夜7時すぎだった。案外町はきれいだった。(翌日聞いたら、だいぶ灰を掃除したあとだった)状況はあまり知らない。直後は大変だったけど早くに復旧したのかな。宿泊場所を探して湖沿いに西へ移動する。知らずに火口に近づいている。さっきから気になっていた物音が、大きく近づいてくる。地響きのような、空振という。月に照らされた噴煙が見える。

泥流に飲まれた町のことは別に書くとして、2人は火口のふもとにいた。詳しく書くとお叱りを受けそうなので少しボカして・・。荒木の精神状態は変になってて、近づくほどより中心へ引き寄せる力が強くなっていく。原ちゃんは「もういい、戻ろうよー」と言いながらも、気になるのか付いてきた。


火山灰はとても細かい。雨を含むとねばってモチみたいに足にからみつく。荒木は65kg、原さんは70kg、荒木はどうにか歩け、原さんはヒザまで沈んだ。「ちょっとだけ!ちょっとだけ先行ってみるわ!」返事は聞かずに先へ進んだ


約20分楽しんで、荒木が目をらんらんと輝かせて戻ると、原ちゃんはまだ埋まっていた。靴を引き抜こうとすると反対の足がさらに沈むらしい。

上のぼくの顔が写った写真では笑おうとしたけど出来なかった。恐怖と極度の興奮で。そこで見たものは映らなかった。30年の人生であんなに興奮したことはない。もどると原ちゃんが不機嫌になっていた。「あんただけ先々行っちゃって!自分だけ何楽しそうにしてんの」

写真のフォルダでは、これが次の写真だった。洞爺湖での夕食らしい。2人はどんな気分で食べたんだろう。このメニュー(+米)は旅の中ではマシな方だったと思う。それで離れた場所で寝た。そしたら原ちゃんだけ虫に刺された。