日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

おいタレル(直島4)

名物の「オープンスカイ」は、日暮れの自然光の変化と調節された照明との共鳴、みたいなプログラム。作品は悪くないので非難ばかりしたくはないけど、せめて映画館みたいなシステムにしてほしい。上映時間を伝えて、途中で抜けてもいい。

・・作品は悪くない、こともない。「家プロジェクト」のタレルさんを観た限り、説明の無さと観客への制限の多さは、この人の特徴なのか。なら開始前に「作者には少々くせがあり、合わない方は外の待合室でお待ちください」と言えばいい。もちろん「45分間身動きせず天井を見つめる」ことが作品の楽しみ方だと、最初に言ってくれれば、こんな気持にならずに済んだ。

係の女性が最小限の説明をして部屋を出る。もう1人は部屋に残る。30人が四角い部屋の壁際に並ぶ。よく分かってなかったので「外の展示も見ていいんですか?」と聞いてしまった。真面目そうな、芸術専攻という風な女性はとても困っていた。


ホテルの敷地にある桟橋。地味に一番おすすめポイントかも。瀬戸内は波がなくて湖みたいだけど、海だから植物が少なくて独特の雰囲気になる。水の中には変わった植物がいた

口数が減り長い沈黙のあと、終了の合図で、ため息とともに陶酔したような表情で部屋を出て行く。係の女性たちは、皆が満足したと思ったかも知れないけど、逆だと思う。中には下調べしていて、楽しんでいた人もいたとは思うけど。ため息は、Freedomへのため息だ。

暇なので、寝ている人、寝てないけど不満そうな人、一応見上げてる人の数を数えていた。そして、じっと終わるのを待つ。この惨めな気分は何かに似ている。ザワザワしていたときは質問できた。それは伝わらず、沈黙の中では何も言えなくなる。皆がお互いの出方をうかがって自由にものが言えない。出ていきたいし、その自由はあるはずなのに空気がそれをさせない。無力感に負けそうなので、この時間に何か意味を探しはじめる。空の色が変わった。あの壁はどうやって掃除するんだろう。

全面きれいな白い壁に、黒い点がひとつある。迷い込んだ蛾だった。壁を離れ、飛びたった。天井の穴めがけて。その自由に自分を重ねて、そこで感動した。バタバタと鱗粉とかまき散らして、この茶番をぶっこわしてくれ。他の客も小さな歓声をあげていた。

中学校の教室で、部活で、自分の気持ちを押しとどめて周りに合わせる。その惨めな感じを45分かけてしっかり思い出させてくれた。Japはこういうのに弱い。うつろな目をどう勘違いしたか分からないけど、アートに期待する自由な精神はきれいに裏切られる。見事に反対なので、狙ってるのかと思った。


ホテルに向かう途中の溜池には睡蓮が気持ち悪いほど咲いていた。朝しか咲かないそうだ。親父が予定を超前倒ししたおかげで見られた

作者のタレルさんだって監修してるだろうから責任はあるぜ。テーマは、見慣れた「光」を再認識する、という感じ。自然は美しいし、光も、闇も良いものだし、内臓もウイルスもゴミも、うまく切り取れば美しく見せることはできそう。長い説明と制限ばかり要求するなら、それは切り取り方が下手なんだと思う。

安田さんの大理石の彫刻には「寝そべってみて下さい。上がるときは靴は脱いで」とだけ書いてあった。