日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

見張りがいない(直島3)

美術館の中にホテルがある。チェックインしてくつろいでいると、もう若い人はいない、全員寝てしまい、起きてあわてて動きまわる。ホテルと美術館はあまりに自然にくっついているので、存在を忘れていた。思い出して、「地中美術館」の予約までの短い時間に出かける。

安田侃(かん)さんの彫刻に寝そべる家族を動画に録った。いつか、幸せな「当時」を振り返るにはいい素材ができた(あまり不吉なこと書いちゃだめか)。以前TVで見ただけだけど、気になっていた彫刻家だった。大きな吹き抜けの下に、何十トンもある大理石の塊が、柔らかそうな形に磨かれている。2つ。

夕方6時ごろ、夕焼けは無かったけど、流れる雲は西日で影が濃くなってる。次男がひとりで出かけて、どこかでひっくり返って空を見ていても大したことはない。今ここでは堅物の親父も合わせてだらーんと上を向いている。ありそうで無いことは、どうやってるのか。

見張りがいない。美術館ではありえないことだけど「ありそうで無い」楽しみは、見張りがいないから。自然の中のアートも、何が良いって、一番は人がいないからかも知れない。

有名な建築家が美術館を作って、すごいプロデューサーを呼んできても(豊田市のこと)、部屋のすみでスタッフが座ってるだけで楽しみは半減する。個人的には9割減するか、疲れて赤字になる。楽しめる美術館を作ろうとしたのに、何で気づかないんだろう。税金の無駄遣いだ。

美術展では、客を楽しませるために作品の距離を近づけたいが、換えが効かないので事故は許されない、つまり自由には触らせない。儲けるためには、悪人もいるかも知れない不特定多数を呼び込まないといけない。

いろんな矛盾を、前向きに解決している。作品に柵や、ガラスを貼り付ける以外で事故を避けるには、客を信用できればいい。開館時間のほとんどは宿泊客が見に来ている。宿泊客の身元はまあまあ確か。客が信用できれば、見張りが要らないから、早朝でも夜中でも開放できる。ここは朝6時くらいから夜9時まで入れる。ものがきれいに見えるのは夜明けか日暮れ。一般人がアートを楽しもうという気になるのも、おそらく昼間じゃないだろうし。


朝6時に行ったら入れてくれたパーク・ホテル地下の展示室

ときどきは誰か見回るだろう。大きな吹き抜けをゆるやかに区切ることで全体が見わたせる。客を緊張させずに。狭い空間で作品と向き合うための小部屋を作っても、中にスタッフがいたら台なしだし、別の不条理なアートに変わってしまう。

短い時間でアートの楽しみ方をたくさん知ることができた。ベネッセさんはすごい。当然わかってやってると思っていたら、地中美術館のナイトプログラムは、やってはいけないことを最高のパフォーマンスでやってしまっていた。母親は「発狂しそうだった」という感想。この島は感動の振幅が激しい。