中華街は行かない(寿4)
遅めの朝に寿を出て港の方に歩く。
首都圏中心のTVから入る知識をたよりに、港の見える公園があるというから、そこで遅い朝食をとろう。
案外遠かった。高台の公園に登ったら、海が見えないので説明書きを探したら、そこは「山手公園」といった。開国当時に外国人の手で作られた日本初の洋式公園だそうだ。
山手には山手な人びとが住む。東京、大阪、神戸と全国に山手と下町はあるけど、ヨコハマは格差も「洋式」だ。寿から30分も歩かないのに、違う国か、違う星のようだ。
フェリス女学院大の横を通るときは、早く下界におりたいと思ったけど、他に道はない。怪しいやつだと見られるのが悲しかった。雨が降っていた。雨よけのペラペラの帽子をかぶって、雨に濡れて歩いている。パンパンのリュックを背負い、スーパーの袋をちょっと前ぎみに出して持っている。中の豚汁が揺れないように。
寿の店で豚汁とご飯を買った。安いからじゃなくて、おいしいから。夜に食べたモツ汁うまかった。
朝になって、再び食料品店に寄る。オカユもダシのきいた薄味の汁物も、ここの住人が求めるものだった。高齢化していることもそうだし、ここで暮らしていて毎日食べるものだから。たぶん作る人も、食べやすい体に優しいものを作ろうと思っている(気がする)。
港の見える公園の展望台で豚汁を食べる。ここでも浮いていることには変わりなかったが、来るのは熟年カップルばかり。シャッター押しますよ、と言うと照れて近づけない夫婦がいたりする。こっちは気を遣わないでいい。
ここまで来て、中華街というのを通り過ぎたことに気づいた。でも、豚汁を食べたら、もうそれは必要なくなった。