日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

吉里吉里人(山形2)

きりきりじん。懐かしい、甘酸っぱい響きがする。こんな人はあまりいないと思う。

吉里吉里人 (上巻) (新潮文庫)

吉里吉里人 (上巻) (新潮文庫)

中1のとき、国語の先生が「田舎の村が独立する面白い小説」だと紹介した。さっそく松山の旭屋書店あたりで買った。中学は寮ぐらしで、100人分の机が仕切られた学習室でお勉強の時間が決められている。今考えると不思議な環境だ。

拾い読みばかりしていた。たぶん集中力がないのと、通して読むと「終わってしまう」からだ。1ページ読んでは息を殺して笑い、見回りが来るとノートの下にかくし、また読んでは、声を出さず顔面だけで笑ってこらえる。あとにも先にもないくらいはまった。
ハードディスクを読み出すみたいに同じ所を行ったり来たりして、先に飛んで最初から読んで、結末は見ないようにした。あんまり嬉しそうにしているから、ちょっと興味を持ったH山くんに「ぜったい面白いから」と貸した。次の日に「何が面白いのか分からない。」と返ってきた。「おまえは変だ。」とも言われた。

めげずに、ぶ厚い文庫3冊を製本して(他の好きではない新潮文庫を解体して補強用の紙や背表紙にした)厚さ10センチの自分オリジナル1冊版を作った。今になると理由がよく分からないけど、まず自分だけの吉里吉里人が欲しかった。そして、この壮大な物語のどの時点に今いるのか手の感覚でしっかりつかみたかったのだと思う。

ここは中1の自分を評価してやりたい。開いたページの右と左の厚みで全体のなかの位置が分かる。聞いた話では、ドラマ『24』のように物語の中の時間は読むスピードにだいたい合わせているらしい。主人公が見たまま一人称で物語がすすむので、主人公が気を失うと、その時間分「空白行」になっている。厚さ10センチなのに、たった1日半の出来事を書いている。左の厚みがなくなると終わりが近いので止めて戻る。分冊だと、うっかり終わってしまうかもしれない。

井上ひさしさんは川西町の出身だった。この盆地の田んぼの続くながめが吉里吉里国の風景か、と少し感動した。そのことを話したら井上ひさしさんのファンだと思われて、資料館を紹介してもらった。吉里吉里人しか読んだことはない。

「川西町フレンドリープラザ」には劇場と図書館がある。図書館には井上ひさしさんが、別れた奥さんに追い出された時?置き場のなくなった蔵書7万冊が寄贈された「遅筆堂文庫」がくっついている。雑誌の切り抜きからマンガまで何でも持ってきてる。人の本棚をのぞくのは面白い、けど、吉里吉里人以外はあまり興味ない。というか中1の自分は限りなく別人で、吉里吉里人も今はあまり。

立派な劇場は映画「スウィング・ガールズ」の音楽祭の会場のロケで使われた。なんでこんなに楽器がヘタかなと悩んでいるころ、未経験の出演者が短期間練習して、映画で実際演奏していると聞いて凹んだ。映画の反響が大きくて、映画の脚本にしかない音楽祭が毎年開かれている。「今その準備をしているところです」とステージの看板を見せてくれた。『第20回東北学生音楽祭』もう6年目になります・・えっ何ですって?しばらくすれ違いの議論のあと、「第6回・第20回東北学生音楽祭」だと理解できた。映画では『第20回・・』なんだから変えるとウソになる。映画の話で、尊敬する師匠がアイドルとかに詳しい気がしてきて心配になる。

本格的な演劇場だから反響音がなく演奏に向かないが、観客と演奏者が一体になれるホールだという。数々の奇跡を起こしている。雅楽の東儀なんとかさんはクールで感情を出さない人らしい。ここではコンサートが終わると、ステージ裏のスタッフ全員とハイタッチして盛り上がった。ありえないことでスタッフがびっくりしたそうだ。それで奇跡。

写真の新宿ユニクロ前で、週末の新宿を行きかう人たちを眺めて優雅に時間をつぶしていた。大雪だった。建物から出てきたアジア系の外国の親子三代くらいの5人が、同時に折りたたみ傘をさすと、おばあさんのもイケメンの息子のも超カラフルな柄だった。上下黒できめた息子のは、スズメバチのような黄色と黒のシマシマだった。

2,600円のバスはなかなか過酷だった。いいものを見た、と気分よく時間通りバス停に来るとバスはまだ着いてない。みぞれ混じりの雪のなか待たされ、係の指示でぞろぞろと移動する。みじめな気分だけど、金を出さないならしょうがない。東京はいやな所だ。自分で選んだんだけど。トイレも毛布もないけど対策はしてある。でも1時と3時のトイレ休憩で照明を全部つけるのはやめてほしい。2時間づつしか睡眠をとらせない。拷問か。

となりの若者は夜行バス歴が浅そうだ。

前の兄さん「イスを倒してもいいですか?」
ていねいだ。
隣人「あっ、どうぞどうぞ」
ゆっくり倒す。10度、15度。
隣人「あっ、ちょっともう無理です!」
前の兄さん&ぼく「それは思っても言っちゃダメだって!!!(心の中で)」

前の兄さんは、ふつうのデスクチェアより浅いリクライニングのまま再トライしなかった。体をねじ曲げて朝まで拷問に耐えていた。