日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

金粉ショー

17時に大須に着いたら祭りはほとんど終わっていた。大道芸は明るいうちにやるものらしい。照明まで揃っていたら大道芸らしくないしね。

3つだけ見れた。「一人見世物小屋・舞丸」、「金粉ショー・大駱駝艦」、「デカルコ マリィ(身体表現者)」。3年ぶりの「大須大道町人祭」で、気に入った芸人さんを探したけど、今年はほとんど出ていない。そして、時間の関係で3つしか残ってなかった。

その3つが、どれも祭りの魅力を凝縮していて、短い時間だけど楽しめた。見ていて、恥ずかしい、笑いどころも照れ笑い、居づらいけど帰れない。まわりの観客もたぶん同じ気持ちでいて、みんな黙って含み笑いしている。静かだけど拍手はしっかり起きる。みんなでムズムズしていると何となく落ち着く。こんな心の動きは日常にはないし、日本の、大須の大道芸ならではだと思う。いい夜だった。
愛知に引っ越した最初の年にに、衝撃的な出会いがあった。鶴舞で用事があって来ていた。大学の先輩が「ネクタイピンを買う」というのでアーケードを歩いていると、後ろから、ほぼ全裸で金色の集団が近づいてきた。移動中らしく、トップレスの女性ダンサーも週末の商店街を淡々と歩く。名古屋はすごい所だと思った。

先輩は、興奮気味に「知ってるか?金粉塗ると皮膚呼吸できなくて死ぬんだぞ」と解説しだす。『金粉殺人事件』というドラマについて語り始めた。

金曜日、たまたま大須に出かけた同僚が前夜祭に遭遇していた。「エンドレスの『金太の大冒険』を商店街のBGMにかけて、巨大な金の玉を押して転がしていた」との報告。これは何としても行きたい。

金粉ショーは最後の演目ということで、大須観音の境内は満員になった。始まると子どもの泣き声が聞こえ、脱落者が人混みをかき分けて外に出てくる。Queen "I Was Born To Love You" がかかると失笑が起きた。なんでこの曲なの。車のCMで使われる爽やかなイメージから遠いじゃないか。

名曲に、違う生き物のようなダンスが不思議と合う。それまでの曲以上に筋肉パキパキの体がクネクネし、おっぱいをブルンブルン振り回すのを見ていると引き込まれる。会場も雰囲気が変わった。脱落者も多かったが。

ためしに動画を探したら・・オリジナルも実は「同じ路線」だった。しかも金粉がかすむほどのエロス(と、ナンセンス)だった。失笑した人は間違っている。フレディもああいう人なんだ。ぼくも笑ってしまった。

ショーが終わると、司会がおひねりを催促しながら、祭りの終わりを告げた。帰り道に人だかりを見かけて寄ると「デカルコ マリィ」の最後の演技をしていた。白塗りの女性が踊り狂って、もう訳が分からない感じだった。

終わると、一部の観客が寄っていって話しかける。地元のおばさんが1年ぶりに会って、お帰りなさい元気だった?、という感じだった。デカルコ・マリィのDVDを買いに走っていたのは外から来た熱心なファンだろうけど、地元の普通の人たちにこういうものを受け入れる空気がある。30年の歴史があって、「官製の『名古屋まつり』に対抗した」とささやかれる、庶民による庶民のための祭だ。

3年歳を食って来たら、その輪に入れそうな気がした。若い頃は、物珍しい物を見つけておもしろがっていたけど理解はできなかった。意外と、前衛的な表現は、若い感性より、地に足をつけて暮らす、つまらない日常から見てこそ伝わるのかもしれない。