満腹定食

平和な一日。

夜勤あけ朝６時半に実家から３件の着信あり。ポケットの中で押された僕の携帯が勝手に発信したらしい。荒木家の早朝の電話は不吉だ。母はぼくが事故で運ばれ、僕は親父が倒れたと思った。ちょっとやそっとじゃ掛かってこないので、いよいよ危ないと思っていた。
知り合いのおばさんが会わせたい人がいるとかいう話になる。前の晩にNHKで、男女の心のしくみについてやってた。恋愛は協力して子供を育てるためのシステムで、他の動物に比べ『未熟児』なヒトの子に集中的な養育が必要な４年が過ぎると冷める。

お見合いは、信用とか世間体とかいろいろやっかいなものをしょいこむぶん別れづらく、恋愛より高度なシステムかもしれない。

北斗の拳ばりに男たちが殺し合っても、何億というライバルに泳ぎ勝って優秀な遺伝子が出会っても、子供が育たなければ意味がない。身体や感情の変化（進化）が追いつかないところを思想や文化が補う。面白いね。

でも男は要らなくなるらしい。かといって二つ性があるシステムが壊れたら女も要らない。産むよりクローンを培養するほうが効率がいい。そんなのは人間じゃない、というけれど、可能性で遊ぶSFではなく、実際に男は薄く弱まってるらしい。

昼から、とりつかれたように職場の倉庫を片付ける。勝手に動かして、と言われそうだけど、やっただけ成果が見える作業は楽しい。昼食も食べそこねたし、もう帰ろう。駐車場では、VOLVOが僕の車にぴったり付いて出られない。かかりつけのドクターらしく立場上なにも言えない。あきらめて大工仕事を始める。十枚くらい板を切り出して外を見る。VOLVOは動かない。ゴミ倉庫の仕切りを作り、棚の取っ手の穴を５つ開けたらやっとどいた。もう暗くなった。

ホームセンターに寄ったあと、とにかく空腹で「きらくのクリームコロッケ定食780円」のことばかり考えていた。きらくもナンワも定休日で、大学近くに出来たばかりの台湾料理「風味楼」に行く。だれが何の店やっても潰れる土地だけど大丈夫かな。

『満腹定食』。わが母校の付近では、このメニュー名があれば人が集まる。普通量の焼きそばとチャーハン。味うすいかと思ったけど全部食べるとちょうどいい。となりの兄さんも満腹定食だ。

帰って風呂で「ドグラマグラ」を読み、横になったら寝てしまって、１２時間寝ていた。