日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

阿蘇

今日で年末の連休はおわり。家族旅行で熊本へ行った。熊本・菊池に荒木家の墓がある。

帰る日。早起きして阿蘇山を経由して帰る。最後に温泉に入ろうと探して回った。『湯巡追荘〜ゆめおいそう〜』という温泉旅館は、朝9時から駐車場がいっぱいで、ロビーは子供であふれていた。

九州の、とりわけ火山の近くは、町にひとつというより何丁目にひとつ温泉がある。その中で子供づれを狙って大繁盛の旅館だった。離れのきれいな家族露天風呂から浮き輪をもった子供たちがぞろぞろ帰ってくる。ロビーで無料でヨーヨー釣りできたりゲームできたり映画のDVDを借りれる。子供にDVDを見せてる間に親はゆっくり風呂に入る。

3連休、毎日温泉に入り、馬刺を食べ、有名な熊本ラーメン「黒亭」の行列にも並んだ。でも何か足りない。日本中おなじような景色と町並みで、最近は家の近くに「温泉」もできた。小さいころ熊本旅行を楽しみにしていたのは、船に乗ることとキャンプと火山があるから。九重と湯布院、そして阿蘇
小さいころよく行った阿蘇山は特別な場所で、あれを見ないと帰れない。何を説明すれば良さが伝わるだろうか。火山地形、草原、火口のスケールの大きさ?そうではなく「スケールの小ささ。手ごろさ」なんだと思う。直径20キロのカルデラ火口というのは、子供の想像力にぎりぎり収まる。その中に町があり川が流れ電車が走る。火山の中に町があることもすごいのに、中央にいまだ活火山が噴火を続けている。ディズニーシーによく似ていると今思った。ここに比べればあっちはおもちゃである。

阿蘇の遠近法:車で阿蘇を目指す。外輪山に近づくと森がひらける。外輪山の縁からは飛行機以上の高度感がある。それは火山が作った外輪山の地形、「自然じゃない」自然と、ふもとの田園風景との差だと思う。物語に出てくる小さな隠された国にも見える。ふもとに下りると外輪山は見えなくなる。不思議なくらい、ただの田舎町だ。でも中心の山々は多彩で美しい。根子岳、中岳、鳥帽子岳、阿蘇山。もっと近づくと山は荒々しい姿になる。硫黄ガスが噴出し植物は生えない。九州各地に「地獄」は多い。「地獄温泉」に「地獄めぐり」。中岳火口ほど地獄らしい風景は他にないんじゃないかな。観光地の散策路にある「東屋」は、ここでは火山弾よけのコンクリート・シェルターになっている。

温泉の経営者はアイデアマンだけど子供たちはかわいそうだ。子供の空想に出てくる世界が現実にあって、その自然が作ったテーマパークの中にいて、浮き輪とアニメで喜んでる場合じゃない。かわいそうと書いたけど、くそガキたち、外に出よう。家の中にだけいてはいけない。外輪山の中にいてはいけない。外輪山の草原で焼きもろこしをかじりながら外から眺める阿蘇、見慣れた中央の山々を登山靴にはきかえて登って見下ろす阿蘇、平野部で浮き輪に乗って露天風呂から見える阿蘇阿蘇は人の精神世界そのもののようだ。

時間がなくて展望所「大観望」に寄っただけだった。朝8時という早い時間は初めてで、よくモヤのかかる盆地に朝日が差して、お告げがありそうな光景だった。原風景とは言わないのかもしれないけど、小さいころ通ったおかげで、この壮大な世界に懐かしさを感じられる。小さいころから両親があちこち連れまわした。それで発達にいい影響があったのか、あまりいい材料が見当たらないけど、少なくとも「阿蘇への愛着」という贈り物はもらった。