日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

きまずい休日

「虹のまつり」という若気の至りなイベントがあります。環境問題の田中優さんが講演するというので少し無理のあるスケジュールで大阪まで出てきた。

いろいろあって、いつも通りのことがいろいろあって、会場に着いたときに、とっくに講演は終わっていた。夜勤明けはいつも情緒不安定で、阪急梅田駅でどうしても「蓬莱の豚まん」が食べたくなった。前の客が20個も30個も買うので電車に間に合わない。諦めて隣のパン屋で買ったビーフシチューパンが気に入らず(おいしいけど気分ではない。不安定なので)少し落ち込み気味で会場の豊田市民会館に着く。
田中優さんの講演の後にコンサートをやっていた。「Family」という、20年前から自給自足生活をしている家族のバンドだ。なんか辛くなった。熱心なファンがいて、手を振って一緒に歌っている。でも、広い会場には少々の熱心なファンしかいない。どこかで見た風景だ。自分のいる福祉の世界と似ている。介助者の自分もふくめて隔離されて暖かく見守られている世界。

浮世離れして仙人に近づいているお父さんと純粋で明るそうな子供たち(ベースの長男は居心地悪そうに見えた。反抗期か)。「〜平和でありますよおに〜♪」たしかにこの場所、ステージ前は平和だけど、外は寒そうだ。また、「やってられねえよ!」と長男がベースを叩きつけそうな、危機をはらんだ平和でもある。

振り返って1500人はいる大きな会場を見わたす。10年前、満員の会場がどよめいていた。怒りと悔しさで。豊中に住んでいたころ、面白そうな映画をやるというので自転車に乗ってきた。何で知ったかというと豊中駅までの通学途中に告知のポスターが貼ってあったから。変なポスターだった。これを読んでお気づきの方がいるかも知れない。いるわけ無いか。僕はいま知ったばかりだ。

『罵詈雑言<バリゾーゴン>』(1996年)各地で「金返せ」コールが起こる発端に。
wikipedia:渡辺文樹

その映画『罵詈雑言<バリゾーゴン>』は伝説の映画監督、渡辺さんの作品だった。当時はネットもなく何が起きているのか理解できなかった。子供の僕は、ただただ社会の奥深さ、怖さに圧倒されていた。犠牲になったのは土日の昼に安く映画が観られると少ないこづかいを持って来た子供たちだった。ポスターに殴り書きされた『失神者続出!』『心臓の弱い方は見ないで下さい』を学校で「市民会館でめっちゃ怖い映画やるで。ホラー映画。面白そうやん」と仲間に話しただろう。好きな人と仲良くなりたくて誘ってしまったteensもいたかも知れない。

最初に監督が出てきた。「真実は自分の目で確かめて下さい」とか真剣に話してた気がする。真剣なのは嘘じゃないんだと思う。ゲリラ上映とは要するにやり逃げで、終わったら監督は居なくなっていた。みな怒っていた。

だんだん思い出してきた。帰り道にポスターを外して持って帰った。今もどこかに切れ端があるはずだ。かわいそうな中学生よりは、よく小さな映画館を巡っていた暇な浪人生は冷静だった。作品のクライマックスは終了後の客席なのかもしれない。罵詈雑言が飛びかい、ふだん曽根駅から服部緑地を散歩していたお年寄りは血圧が上がり失神寸前、心臓にも負担が大きい。その後の「リング」とか和製ホラーなんか目じゃない「社会ホラー」の傑作である。

中学生は社会人になっている。衝撃を受けた子供たちは「虹のまつり」に共感できるだろうか。

(「虹のまつり」批判ぽいけど好きです。終わりがいいので一旦締めて、また書きます)