日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

槍ヶ岳

20日間あちこち行った。長野2泊、長野2泊、沖縄2泊、富山0泊3日。遊びまくったけど疲れてない。費用は1万、2万、9万、1万5千、合計14万円なり。同僚の180万円の衝動買いホンダよりはいいと思う。遊んだけど、後ろめたくない程度に研修的な要素を入れた。

槍が岳は2年前の御岳登山の時に諦めた。あらためてルートの詳しい解説などを読んでみると、備えは十分にして、人の多い時期に整備されたルートを歩けば大丈夫そうだと思えてきた。
2年間かけて使う機会のない山道具をそろえてきた。5年前に買って、鹿児島で一回つかったきりの65Lザック、2年前の初給料で買った重登山靴、2回しか使ってないテント、愛用の寝袋は、学生のとき小樽で盗難にあい現地のアルペンで買った4,500円のを8年くらい使っている。

小樽ではテントも食糧も皆持っていかれて、広い空き地を銀マットが風に吹かれて転がっていた。泥棒の相手にされなかった安マットも鹿児島でボロボロになり、去年がんばってエアマットを買った。しかも180cmの高い方だ。結論としてマットはけちらないこと。いつでも快眠できるなら1万円なんか安いもの。作ったやつはえらいよ。

夜中に出発し41号線で高山、そこから平湯温泉へ。食糧の調達。5,000円近くかかった。レジを見て嘘かと思った。でも明宝ハム400gが1,100円だからそんなもんか。上高地へ行く車は平湯郊外の駐車場にとめ連絡バスで移動する。15分間隔くらいで出ていた。すべて満席。10時に登ろうとする登山客は僕くらいだった。

キャンプ予定地のババ平までは平坦な道のりでも5時間は歩く。緊張して足元ばかり見て歩いていた。急いでいるつもりだったが、前を20mほど離れて歩くおじさんに追いつかない。小さめのリュックをしょって緑のポロシャツを着て、登りでもペースを変えない山なれた感じがする。ときどき鼻唄が聞こえてくる。

追いつかない。いい声で歌いはじめた。まいった。顔をしかめて登ってもしょうがない。敬意をはらって少し後ろを付いて歩くと、徳沢ロッジでトイレに入ったので休憩ついでに話してみようと思う。なんか急いでトイレに入ったな、と思いつつザックを降ろしていると中から切り裂くような激しい排泄音が聞こえた。気まずくなり水だけ飲んで出発する。

だんだん人は減るがずっと前後に人の気配がある。あいさつは山のマナーというが、これだけ多いと会釈で勘弁してほしい。暇つぶしに「狭い道ですれちがうとき、登りと下りどちらがゆずるか」について考える。たしか基本は下りが待つ。登りのほうが大変だから。でも下りのほうが止るのは大変だし、登りが待つほうがすれ違いは早く済む。大勢が登ってくるとき延々と待たすのもなあ。

僕なりの結論は下りが待つ。理由は人を待たせると日本人は焦るから。事故の9割は下りで起きるらしい。今回は下手の単独行だから「下りは怖い、下りは怖い」と念じながら来た。下りを焦らせて「どうもすいませんね」とかけ降りて足をくじいて「たいしたことありませんハハ」と強がって後で地獄をみることになる。登りはどんなに焦らせても顔から転ぶだけだ。これはマナーではなく、登りが待つのはちょっとした罪だと思う。低酸素のせいでほんとうにどうでもいい。

ガレ場の登りに南米系の外国人がスコップを持って立つ。岩陰でもう一人が登山道の踏み石をなおしている。「道の整備ですか」と聞くと疲れた感じで「あー」と答えた。今が登山客のピークでうんざりかもしれない。外国人は山小屋の従業員で、日本を代表する山の登山道を直してくれている。不思議な感じだ。俳句に詠めそうな情景だと思ったけど低酸素でどうにもならず。

『 槍守る 異国のスコップ ストック知らず 』

【解説】最近流行で皆ストック(つえ)を持っている。ダブルストックは山スキーの写真を見て勘違いした人みたいに見える。あー季語がないよ。ストックは冬なのか?川柳ならいいか。槍とスコップとストックを微妙にかけたかったが分かりづらいので解説してしまった。

いつもそうだが高山では寝れない。テントを出て月を見に行く。氷河のあとのものすごい谷にテント場がある。風はないけど空の雲は激しく走っている。この期待感はいいな。朝5時にわりと早いほうで出発したけど、どんどん抜かれて最後になった。ちびっこにも抜かれた。まあいい、山は楽しむものだ。ポロシャツの紳士のように。

登頂の前後1時間づつ山頂部が晴れた。奇跡的だ。写真の最後の上りは疲れがふっとんだ。山頂。感動しない年齢になった。冬の新穂高ロープウェイから見た景色はよかった。馬鹿らしい感想だ。明宝ハムをかじりながら山頂をうろうろ、いつもパンばかりで力が入らなかった。塩分とたんぱく質で下りに備える。

長い長いハイキングだと思った。道も良いし天気もいい。調子にのって少し尾根を歩くルートをとる。これが間違い。100m前後のピークが3つある。地図を見れば分かること。標準タイムを鵜呑みにしてしまった。キャンプ場には時間通りに着くが力尽きる。同時に土砂降りが来た。

尾根から下る道で何度も休憩を取る。頭の上を黒いものが過ぎる。ものすごいスピードだ。アマツバメ。下山して明神池で買ったガイドブックによると時速200kmを超える。どこにでもいるのはイワツバメ。高山にしか棲まない。気高さを感じる鳥だ。下りはこれだけ良かった。

上高地と周辺の山々―自然観察 (自然ウォッチングガイド (2))

テントの床部は水を通す。排水溝を掘ったりしたが追いつかず中は水浸しだ。エアマットに浮くようにとりあえず寝た。雨はバリバリいうなか熟睡、エアマットはすごいな。22時に起きて夜食。高山みやげの「とうふの味噌漬け」これ高かったなあ。消化が良くてたんぱく質いっぱい。豆腐一丁モシモシかじりながら、相変わらず計画的に馬鹿なことをしていると思う。

帰りに「神の湯」に寄る。お盆のラッシュに温泉は期待していなかったが、ここは良かった。あまり囲ってない囲いのスキマから山の緑がまぶしかった。