『マタギに学ぶ登山技術』
お盆に短い連休がとれた。山に登ろうと思う。山の本を買いに行ったら、変わった本があって買ってみた。これがおもしろい本だった。
- 作者: 工藤隆雄,木部一樹
- 出版社/メーカー: 山と溪谷社
- 発売日: 2008/03/19
- メディア: 新書
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「マタギは再生物しか採りません。先祖から受け継いできた自然は昔のまま残すのが私たちの義務。自然破壊はしない。山を歩くときも細心の注意をはらっていますよ」
「なるべく同じ道を通らないようにしています。・・そうすると道ができないのです」
「苔のある道は避けて通ったものです。苔は一度だめになるとなかなか元通りになりません」
マイタケは二割残して採る。翌年は八割残して採る。そうやって茸を守ってきた。フキは、残した根から新しい茎が伸るので、群落の周囲からすこしづつ採る。採った茎の残りは踏つぶし早く腐らせることで、残した茎に影響が出ないようにする。
山に登ろう思ったけど、同時に山登りなんか最低にくだらないとも思った。人間が百年暮らせば環境は壊されるし地形も変ってしまう。マタギは千年暮らしても道さえつけてはならないという。
猿投山の道なき道をコンパスもなく歩いたことを思い出した。ものすごく怖いけどワクワクする時間だった。整備された登山道に出て、たった一時間で諦めたけど。やっさんとコンパスを使って岡崎の山を歩いた。五感が研ぎすまされる感じは高山でも味わえないものだ。
夜道は懐中電灯をつけない。かえって視野が狭くなる。確かにそう。目がなれるまで何時間でも座って目をつぶるらしい。なるほど。
岩場に湧く水は飲まない。大腸菌が、ではなくマズイから。ブナ林を流れる水は「コクがあっておいしい」。フキの葉ですくって飲むと味わいが増すそうだ。名水百選なんかとはだいぶ違うんじゃないか。
猿投山歩きでは森の養分が溶けて赤っぽい小川を見つけた。のどが乾いていて、「案外うまいんじゃないか。案外うまいんじゃないか」と独り言で言い聞かせてみたが、怖くてひとなめしか出来なかった。あれはうまかったのか。やっぱり止めといてよかったかも。ブナ林の水を飲む旅に出ようか。