日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

『マタギに学ぶ登山技術』

お盆に短い連休がとれた。山に登ろうと思う。山の本を買いに行ったら、変わった本があって買ってみた。これがおもしろい本だった。

マタギに学ぶ登山技術 [ヤマケイ山学選書]

マタギに学ぶ登山技術 [ヤマケイ山学選書]

マタギは日本のマウンテンマンである。1000年という歴史は比べものにならない。秋田県の山を中心に熊や鹿を捕って暮らしてきた。昔はアイヌのような民族の名前だと思っていた。ただの猟師ではなく、独自の歴史と文化、宗教をもって代々受け継がれている職業集団だという理解でいいのかな。

マタギは再生物しか採りません。先祖から受け継いできた自然は昔のまま残すのが私たちの義務。自然破壊はしない。山を歩くときも細心の注意をはらっていますよ」
「なるべく同じ道を通らないようにしています。・・そうすると道ができないのです」
「苔のある道は避けて通ったものです。苔は一度だめになるとなかなか元通りになりません」

マイタケは二割残して採る。翌年は八割残して採る。そうやって茸を守ってきた。フキは、残した根から新しい茎が伸るので、群落の周囲からすこしづつ採る。採った茎の残りは踏つぶし早く腐らせることで、残した茎に影響が出ないようにする。

山に登ろう思ったけど、同時に山登りなんか最低にくだらないとも思った。人間が百年暮らせば環境は壊されるし地形も変ってしまう。マタギは千年暮らしても道さえつけてはならないという。

猿投山の道なき道をコンパスもなく歩いたことを思い出した。ものすごく怖いけどワクワクする時間だった。整備された登山道に出て、たった一時間で諦めたけど。やっさんとコンパスを使って岡崎の山を歩いた。五感が研ぎすまされる感じは高山でも味わえないものだ。

夜道は懐中電灯をつけない。かえって視野が狭くなる。確かにそう。目がなれるまで何時間でも座って目をつぶるらしい。なるほど。
岩場に湧く水は飲まない。大腸菌が、ではなくマズイから。ブナ林を流れる水は「コクがあっておいしい」。フキの葉ですくって飲むと味わいが増すそうだ。名水百選なんかとはだいぶ違うんじゃないか。

猿投山歩きでは森の養分が溶けて赤っぽい小川を見つけた。のどが乾いていて、「案外うまいんじゃないか。案外うまいんじゃないか」と独り言で言い聞かせてみたが、怖くてひとなめしか出来なかった。あれはうまかったのか。やっぱり止めといてよかったかも。ブナ林の水を飲む旅に出ようか。