日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

Googleは思ってる以上に「検索エンジンの会社」・前編

Google Notebookについてどう思う?」

id:hacking_dubby氏からの質問を考える。

サービス開始からずっと使っていて、とても良好。スクラップブック・ツールとしては(注)「http://amb.vis.ne.jp/mozilla/scrapbook/index.php?lang=ja」や「紙copi」ほどの編集機能はないが、シンプルで使いやすい。サーバー上のデータの扱いも、Ajaxをうるさくないギリギリ(ほんとギリギリ)に使って「Yahoo! Notepad」のメジャーバージョンアップ版という感じ。

(注)ヘルプでは、スクラップブック的な使い方を中心に書いてある。

With Google Notebook, you can browse, clip, and organize information from across the web in a single online location ... You don't ever have to leave your browser window.
意訳:これを使えば、ウェブを見て、気になったとこをコピペして、整理するところまで、ページの移動もなくシームレスにできるよ(とまでは書いてない。。)

ただのスクラップブックじゃない

Notebookは斬新で、他のどんなサービスとも少しづつ違う。(ベータ版の現状では「少しづつ足りない」印象も・・)リッチテキストへのこだわりや公開モードなど、上にあげたスクラップブックやメモの機能には収まらない特徴がある。スクラップブックと呼ぶと「スクラップしてしまい込む」というイメージに縛られてid:hacking_dubbyが知りたいような「本当の目的」を見失う気がする。「スクラップブック」はひとまず忘れよう。Google マップ - 地図検索のコア要素が「ドラッグできる地図」ではなく「誰でも地球(の座標)上にデータを書き込めること」だとしたら、Notebookのコア要素はなんだろう?
それは「Webを流れる情報とユーザーの思考をシームレス(継ぎ目なく)につなぐインターフェース」だと思う。ブラウザのプラグインを使うことに始まり「出来るだけユーザーの思考を途切れさせない」インターフェース作りに大変な労力をかけていることが分かるから。(逆に、たくさんのノートを整理しようと思うとインターフェースが貧弱だったりする)

"from planning a vacation to researching a school paper to buying a car"
休みにどこへ行くか計画したり、学級新聞の資料集め、目当ての車の比較検討など、あらゆる「しらべもの」に役立ちます。
http://www.google.com/googlenotebook/overview.html

Notebookのヘルプ:概要に書かれている使用目的に目新しいものはなく「そんなの前からやってるよ!」と旅行サイトや車の販売サイトから苦情がきそうだ。そのあたりが人によって受け取り方が微妙なテーマかもしれない。個人的な興味のせいもあるけど、NotebookはWebとユーザーの関係をガラッと変えてしまう要素を含んでいるように思う。

「ただのスクラップブックじゃないの?」

分からないけど、モチベーションが続かないので「画期的なサービスだ!」という前提で書きます。

たとえば、買い物やレポートを作るためなど、人が何か目的を持ってWebを見てまわる時の「情報の流れ」をかんたんに書くと、

[図1] 情報の流れ
(1)情報のインプット ⇒ (2)吟味、整理、編集 ⇒ (3)アウトプット

具体的には(一貫性ないけど)
(1)Webブラウズ、RSSリーダーソーシャルブックマークSBM)、検索
(2)スクラップブック・ツール、メモ帳、SBM、やっぱりメインは脳
(3)ブログ、wiki、オフィスソフトで清書、プリントアウト

掲示板系のサイトなら(1)(2)(3)を全て含むし、アウトプットしないことの方が多いし、「分けるとしたらこうだろ」程度に思ってください。個人的には(1)インプット偏重な気がしますが、ツールも揃っていて流れは悪くなさそうに見えます。Notebookが入り込む余地はあるのか?

「Webと思考をシームレスにつなぐ」というのが誇大すぎるなら「・・の最初の段階」でもいい。具体的にどのへんそうかというと

図1の(1)(2)(3)間の流れを「Webサイトのリンクをたどるように」スムーズに移動できる
今のNotebookでも一応出来ている。

  1. 記事や写真をスクラップして並べ替え(1)、
  2. コメントつけて文書フォーマットを整えて(2)(Googleがオフィスソフトに食い込むのはこの辺じゃないかと)
  3. プリントアウトする、または公開する(3)
  4. 他のユーザーが公開されたノートを引用して・・(続く)

これまでも、とくに不便に感じることはなかった。けど、先人の努力で世界中に散らばった情報がブラウザひとつで見られる偉大な「透過性(間にあるものを気にせず使える、という意味で合ってる?)」に比べて「その後の情報の利用」に関してはまだスムーズとは言えない。
Webといえば「公開」とか「コミュニケーション」とか「個人の外(変な言い方)」の活動について語られるけど、そこを流れる「情報」はかならず個人的な活動(買い物、文書作成、判断)に関わっている。たとえば「Web上の資料を基にWordでレポートを書く」という問題解決を中心に情報の流れを見るとたぶん5年くらい変わってない。(「問題解決透過性」というのを考えたが多分間違ってる)このユーザーの活動をWebと太いパイプでつなげば・・何が起きるのか正直分からないけど、後で少し妄想してみます。

余談・インターネット、というよりは「Webの元祖」ヴァネバーブッシュ先生のMEMEX - 魔法使いの森も「知的生産ツール」に近いものだったような

図1の(3)アウトプットが新しい情報としてWebに加わる。
じつは、ブログなんかよりもっと簡単にWebページを作る方法かもしれない。Googleのアカウントはあれこれ聞かれずすぐに取れる。気になる記事をクリップするのもどんなブログツールより簡単でコンテンツに困らない。あとはコメントをつけてWISWIG編集で飾るだけでいい感じのページができる。ひょっとしてGoogleページランクが高めになるとなったら一気に広まりそうだ。

情報の流れの話にからめれば、新しい情報は「あるユーザーの目的意識にそって」Webを再構成したもので、情報はユーザーを通ってWebにフィードバックされる。SBMとかブログとトラックバック、最近のDigg - What the Internet is talking about right nowとかの「みんなで質が高い(人気がある)情報を探しやすくする」サービスに近いこともできる。違うのは、情報が個々のサービスにバラバラに書き込まれるんじゃなくて、ひとりのユーザーを中心に結びついていること。

公開ページの割合は少ないだろうけど、Google検索のチューニングには使える。Googleをちょっと知っている人は「対価としてデータを提供」することを了解しつつGoogleのサービスを使っている(または、やめられない)。GoogleDesktopでたっぷりローカルのデータを手に入れたはずだけど、もっとWebに関係した使えるデータが欲しかったのかな。このへんはDesktopやGMailよりも「ユーザーデータほしい欲」がはっきり伝わってくる。理由は後で(たぶん)

「なにを始めようとしているか?」

Googleの動機はユーザーデータを集めることかもしれない。でも、そのためにはユーザーが日々使ってくれる便利なサービスを提供しないといけない。スクラップブック以外にどんなサービスがありそうか無責任に書きだしてみる。

1・ブログのようなもの

誰でも簡単に情報発信が出来るようになってブロガー何百万人といっても、「Webを読むのと同じくらい自然に」考えたことを書き込むようにはなってない(ならなくていい気もするけど)。トラックバックやコメントが果たしていた機能はGoogleが自動的に行う。記事をクリップすればGoogleに知らされ自動的にリンクが表示される。GoogleSEO対策ずみのブログという売りもある。

2・ソーシャル・ブックマークのようなもの

ブックマークをクリップして公開する点では同じだ。いいところは

  1. ひとつのNotebook(Notebookのページ単位)には関連するブックマークが整理されているから、たとえばはてなブックマークでタグ検索したときに「関連するページ」として提示できる。
  2. ページの一部をクリップできるから、画像一枚や記事のなかのある文について共有したり議論できる
3・参加型ニュースサイトのようなもの(digg.com, memeorandom.comとか)

上の二つ目の項目は、こっち向けかな。Googleなら、公開指定にしなくてもNotebookのコメントから内容を抽出してリンク情報と組み合わせれば、Google ニュースのユーザー参加型草の根ニュースサイト版を作れてしまうんじゃないか。
なんでGoogle得意の「ラベル」と「星」を使わなかったんだろう。ノートやクリップの数が増えると急に使いにくくなる気がする。読み込みも時間がかかる。

4・オフィス・アプリのようなもの(ワープロとか)

Notebookのリッチテキスト機能を見て気が付いたんだけど、Googleがオフィス分野に進出するのが本当だとして、それはgoogle:writelyみたいなAjaxアプリを使うことだろうか?再び情報流れ図をひきあいに出すと「Webで資料を集め文書作成する」というユーザーの問題解決を(1)⇒(2)⇒(3)の流れに組み込む方がGoogleらしい気がする。
分かりにくいので言い換えると、学生のレポートやプロジェクトメンバーに回すような簡単な文書やプレゼン資料なら、Notebookに少し改良をほどこしたモノで十分だし効率もいいはずで、その割合はかなり大きいんじゃないか。
ぼくの妄想どおり進むと、WordやPowerPointは、現在のAcrobatのような高くて限られた人だけが使うツールになる。

5・検索(広告も込み)

とうぜん検索精度の向上にユーザーデータが使われるだろう。
Notebookのデータの特徴は

  1. 「選択範囲のクリップ」機能に力が入っている:1単語を引用することは無いだろうから、Googleは「誰がページのどこからどこまで引用したか」把握できる。
  2. 1アイテムにクリップできる要素(リンクや記事引用、画像)が一つだけ。

これがすごいのは、知られているアルゴリズムでは「そのページへの」リンクで関連度を測るのに対し「記事単位、文脈単位」に張られたリンクを計算に使える。
人気検索語に対するSEOは徹底していていて、悪いとは言わないけど(いちおう配慮)あまり極端だと止めてはてブで探そうかと思ってしまう。そこを例えば「引用記事内の重要語をページの検索ワード」にすれば、誰かが引用したページが上位に来るし、ページタイトルと関連のない検索ワードでも、ページ内に多くの人が引用するトピックがあればヒットする。

じつは書いているうちに、検索しかないだろう、という気持ちになった。Googleにとって「キーワードを入れると欲しい情報が手に入る」っていうシンプルな検索技術が相変わらず「どんな手を使っても死守すべき」最優先課題だという気がしている。

(孤独に)つづき書きます。

(補足)

さっそく公開Notebookを、ブログ、というかHTMLジェネレーターみたいに使う人がいますね。「公開ページを検索」してみると面白いです。まだ様子見の人が多いようですが。
Google Notebook
↑これは自分の本の宣伝サイトみたいです。