日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

NHK「進化・生命の奇跡 第七回・究極の動物」

2001 National Geographic TV

海底の砂の上に5本のウデが星型になったヒトデがいる。裏返すと真ん中に口がある。すべてのウデを持ち上げて、先をくっつけると「ウニ」になる。ウニを両手でひっぱって伸ばすと「ナマコ」になる。みな「棘皮動物」という仲間だそうだ。

棘皮動物(Wikipedia)

・・という説明をリアルなCGアニメで見せてくれて、とても分かりやすい。だけどリアルすぎて気持ち悪い。こういう普段スポットの当たらない生き物に抵抗があるのは、触感が分からない、つついたら破けて何か出てきそう(中身が分からない)などの理由だろうか。中身がウニ(身)であるウニには安心感。

この「棘皮動物史上」かつて無い扱いは、彼らがヒトなど高級な動物を抑えて「究極の動物」に選ばれたから。受賞理由は「長い進化の結果たどりついた単純さ」みたいなことだと思う。「大腸菌は究極の生物」というのと似た話で、複雑だから優れてるわけでも、進化したものが優れているわけでもない、ということを極端な例で教えてようとしてる。大腸菌でピンと来なかった子供も、夏休みに海に行って水の底でのたうっているブヨブヨした物体(ナマコ)を踏んだことがあるかも知れない。実感のわく大きさと形が教育上好ましかった。

最初で最後のスポットライトを浴びるウニ、ヒトデのために、取材は徹底している。捕食など主な活動は口が腹側なので見えないし、すべての行動が超スローモーションなので何が起きてるか分かりづらい。好物のムラサキガイ(小さい3センチくらい?)に超小型カメラを仕掛ける。哀れなムラサキガイは、ターゲットにされやすいように少し口を開けて固定され、水圧で動く「管足」に入り口をこじあけられ、ヒトデの口から吐き出された「胃袋」がズルズルと入り込んで胃液を出し「生きたまま消化」されてしまった。水中にただよう透明な胃袋は幻想的で、極悪なスプラッターシーンは意外にも夢のような心安らぐものになった。

棘皮動物」の魅力は、ヒトとウニが同じ場所にいても、それぞれ別次元に属しているような、世界の広がりを感じられることかもしれない。SFに出てくるエイリアンは、ヒトと同じように考えたりしゃべったりするけど、骨格や組織、構成物質はちがう(ことが多い)。

  1. ヒトデの骨格は魚のウロコ一つ一つに小さな筋肉がついたようなもの
  2. 他の動物と同じように動き回るが、筋肉はたいして役に立ってない。「水圧ポンプ」をつかう「管足」や、「キャッチ結合組織」と呼ばれる独特のしくみがある。
  3. 他の高等な動物と同じように、ヒトデ同士でケンカしたり、遊びでじゃれあったりもするけど、脳は無い。中枢神経らしきものも無い。

ヒトと同じ動物ではあるけど、ヒトの方に思うところあって何億年か前に別々の道をすすむことになった。背中を見送ったウニたちはやがて海中で進化を極め、地上ではヒトがもっとも繁栄した動物になった。幼いころ生き別れた兄弟がいて、やがて正反対の分野で大成した二人が出会って言葉は無く目線で交わされる何か(劇画マンガのワンシーン)を画面上のナマコたちと交わしたような気がする。