日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

『羆嵐』

1982 吉村昭 amazon:羆嵐 新潮文庫

くまあらし。熊を殺した後に吹くという強い風のこと。大正時代の北海道で、小さな村がヒグマに襲われ7人が殺された。日本の獣害史上最悪の事件といわれる。

この話とは少しばかり縁がある。旅行中に事件現場の近くを通りかかった。それだけ。「苫前」は北海道の上半分の日本海側の町で、白く泡立つ日本海と風車が並ぶ緑の丘の間を下る、自転車こいでて一番楽しかったところ。

その前後の道路わきに「羆(ひぐま)襲撃事件の地・この先8キロ」という小さな案内板があり、山に向かって狭い道が伸びている。8キロ坂を登って石碑が一本だけだったら、危ういバランスをどうにか保っていたチームワークが一瞬で吹き飛びそうだ。僕が折れたというか僕も体力に自信がなく、諦めて先へ進んだ。

当時は「1頭の熊が小さな村を全滅させた」と拡大して勘違いしていた。目の前には夏の北海道の低い山々に緑があふれ、人気はなく木々が風にそよぐ音だけ聞こえる。ある晩に奥地の村が一つ消えても誰も気づかない。映画みたいな話で、しばらく心に引っかかっていた。

図書館で関連した本を見つけクマさんの残虐ぶりを詳細に知る。さて「高熱隧道d:id:arakitakaya:20050723」でファンになった吉村さんはどう書くのか。