日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

カエル・ブルース

夜回り先生の関連で、ある後輩のことを書きたくなりました。
飲み会では率先して盛り上げ役を買って出て、それはすごい才能です。道化師(ピエロ)として。
ひたすら押して押して、空回りする芸風で、見知らぬ者同士の会もドッと沸きます。セミになったりカエルになったり、万国共通の笑いに初対面でもやられます。彼を知る人は、以前の彼を知る人は、痛々しくて見ちゃおれないのが正直なところ。でも、こうなった原因の一端を担っている自覚から、それを忘れるために、さらに彼をアオる。
「腹から声を出せ!」「(ジャンプを)高く、もっと高く!」「あと10回!」
最後はボロボロになって、病院送りになったりします(急性アル中で一度だけ)。

声は枯れ、すべてを出し尽くして会は終わる。驚異の回復力を持っているのだが、毎回ひどいことなるので、その度に、この人はもうダメだ、明日の2限には来ないだろうと予想する。そして、翌日何事も無かったように現れるのを見て、心配して損したと思う。


ごていねいに切り取って頭にのせられたビニールには「ごみのためのごみ袋」と書かれている。


動けない彼を、寝ているベンチをタンカにして運ぶ。こういう時は皆協力する。愛されてる。

カエルの帽子。「これ着けると元気でますから」、と仲間が医者に頼んで、診察室でもかぶっていた。


先週あった集まりの帰り道、ポソッと弱気なことを言うのを聞いた。ふだんは、過剰に自信にあふれた彼なのに。冬は耳があったかくていいんです、と脱がないままのカエル帽子が悲しげだ。あーあ、左の眼球飛び出してるよ。「カテキン式」のCMで似たような帽子が「変える/カエル」という意味で使われていた。彼も帽子をかぶって、一時的に変身できる。さらに、「帰る・返る・戻る/カエル」って意味にもとれる。それもそうだろう。安易に断言して悪いと思うけど、分かり易すぎ。かえろう、道を踏み外した、その時間まで。

1ヶ月前の集会でのこと。
泥酔した彼がごみ袋に入っていて、その周りに財布や携帯が散乱していた。忘れないように、それら私物を拾ってスーパーの袋に入れてやる。高そうなデジカメは壊れていた。ストラップを首にかけたまま、コンクリートの床をゴロゴロ転がったせいだ。ズームレンズが10度くらい傾いて固まっている。力ずくで矯正して、スイッチを入れると、ウインウイン前後運動を始めて止まらなくなった。

横になっててもつらそうだが、意識が戻っても、カメラのことを知れば別のつらさがある。修理は高いんだろうな。笑顔のまま、寝言で「ごめんねみんな、エヘヘヘ」とくり返している。誰も部屋にいない。彼を放って外へ行ってしまった。床の上でモゾモゾ動くのを、壊れたカメラを手に見おろす。胸がいたむ光景だ。

犠牲者、という言葉を思いついた。いや彼も十分悪人なんだけどね。自分のことを考えると、彼以上に迷惑かけ放題のダメ男であるのに、周囲にチヤホヤされて幸せいっぱい。なにか不自然だと思っていたけど、その一部を彼が引き受けてくれている気がした。いや、メンバー全員ぶんかもな。

しばらく会うことは無く、その先週の集まりでおそるおそるカメラのことを聞いた。
「何のことですか?壊れてないっスよ。もう絶好調っスよ。」
ああ、また心配して損した。っていうかそんなハズない、あんな盛大に壊れていたのに。
苦しんで、常識で計れない力を得たんだ、ということにしよう。回復力、もしくは(良い意味で)人をガッカリさせる力。きっと現在の苦境も乗り越えられる。

がんばれカエル。直接会うと、どうしてもイライラするから(笑)日記に書きました。

# あいこ 『うわー。すげー。 私の大学にもこんな子いたよ。 私はもう、こんなことできる歳ではないけど、 (紙一重の事はやっているが…。) せめてそんな若者をやさしく見つめれる医者のような大人になりたいよ。』(2005/1/31 16:30)

# あらき 『>私はもう、 ?かつては、やってたの? この彼は性別で評価が分かれるキャラクターだと思う。「バカやってるな」というのは男女ともに同じだけど、たとえば彼が恥ずかしい行動をとると、見ている男達は我が事のように恥ずかしくなる。自分の中の汚いものを見せられてるような・・って悪くいいすぎか。いい奴なんだけどね、あまり会いたくないけど(笑)』(2005/1/31 17:32)