日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

奥三河・日帰り旅行1

かなり前にNHKで新しい建築を紹介する番組があって、ひとつ気になった美術館をメモしておいた。静岡県天竜市にある「秋野不矩美術館」という名前で、宮崎アニメに出てきそうな不思議で用途不明な建物が山の上に建っている。おもしろいのは展示室に入る前にクツを脱ぐこと。と書いてて、和室なら普通じゃん、と思いかけたけど、映像の中で展示室の石かタイルを敷いた床に、裸足であぐらを組んで絵を眺める男の姿は新鮮だった。みんな裸足なのか、と勘違いして、さらに感心した。

すこし遠いが一日空いてれば行ける。いつにしようか、クリスマスがいい。通り道に、ながめ抜群だと先生がすすめていた鳳来寺山がある。邪気に満ちた下界を出て修験道の行場でもある山に登ろう。ぼくの周囲には邪気よりも、多くの報われぬ魂が浮遊霊みたいにプカプカ飛ぶようだ(最新のmixiサーフィンから)。逃げないと同化される。

おととい23日に、たこ焼き屋台で余ったてんかすとたこ焼き鍋を持って友人を訪ねた。買い物に出た友人にデザートが欲しいと連絡したら、ケーキのスポンジと生クリームを買ってきた。特製イモ・パイン・ケーキで、図らずもクリスマスを祝うことになる。それはいいけど、その後で写真が趣味の友人が最近撮ったものを見せてくれた。良いのが撮れたと渡された一枚には、そいつの彼女が写っていた。写真も悪くないんだろうけど、カメラに向けられる信頼しきった表情も、悪くないんだろうけど、スッキリしないというか羨ましいというか。まずい同化される。ゾンビが、例のトリオでやってくる。

邪気の残るゼミ室で課題をやりつつ夜を明かし、午前3時ごろに出て鳳来寺山頂から日の出を見よう。その先に「亜寺の七滝」というきれいな滝がある。開館時間まで、眺めのいいところに車を停めて昼寝してればいい。そううまくは行かない。疲れるようなことは何もしてないのに、気がつくと椅子に座ったまま寝ていた。2時半、もう少し。椅子から崩れ落ち床に丸まって寝る。サンタを待つ子供のよう。6時、もういいや、毛布を出して本格的に寝る。10時、今日はやめとこうか。

1号線を避けて山道を走る。1時半に鳳来寺門前町に着く。参道に近い町立の博物館に寄った。鉱山がある土地だからか、鉱物の展示が充実してる。駐車場を使わしてもらう目的もあったけど展示もそれなりに楽しめた。それなりに。箱の中の番号をふった石ころの名前を当ててみようゲームはやらなかった。玄関前に石の入った大きなカゴがいくつも並び野菜直売店のようになっている。一個500円、化石入り800円とかで売られているが、見るだけにしておいた。

帰りぎわロビーの図書コーナーで一冊の本を手に取った。吉見昭一「虫をたおすキノコ」という昆虫に寄生する菌類(冬虫夏草)についての本だった。マンガ「美味しんぼ」にたびたび登場する。マンガでは、最高の漢方だ、おほほっ!(課長)、とか言ってすぐ食われちゃうが、ちゃんと調べると面白いことが分かる。哀れな虫を人または自分に置き換えるハードな読み方もできる。じつに怖い。

  • 日本でも珍しくない。西日本を中心に寄主(寄生される虫)がいれば、どこにでもいそうな印象を受けた。
  • 地中に棲むクモやセミの幼虫が寄主となることが多い。
  • 管を伸ばして胞子を飛ばすため地上に頭部を出す。頭部は小さいことが多く、カビや鳥のフンに見える。
  • セミにはセミタケ、という風に寄主とキノコの種類は対応してるようだ。他にもクモタケ、ハチタケ、アリタケ。
  • 寄生すると、寄主を生かしたまま少しづつ養分を奪っていく。
  • 甲殻が家のように外敵から守ってくれる。その中で思い存分に体内を食い荒らす。
  • 抜け殻だけになると、繁殖のため、甲殻のスキマから管を地上まで伸ばし胞子をまく。
  • 寄生されて死んだ虫は、ずっと生きていた時の形と色を保つ。(たぶんキノコが死ぬまで)
  • ↑悪趣味なやつだ。

児童向けだし、よっぽどマイナーかと思ったら、書評サイトの「松岡正剛の千夜千冊」に紹介されていた。松岡さんの小学校時代の恩師らしい。熱血教師であり菌類の研究者でもある。それを知って納得がいった。キノコ関係(じめじめ)とは思えない情熱と熱さで書かれている。つい引き込まれて、薄い本だけど、ロビーのストーブに当たりながら一気に読み終えた。

「気がつくと体中がかゆくてしかたありません。ヤブには蚊がたくさんいて、刺されてしまったようです。白いシャツに点々と赤く血がついていました。しかし、私の体は軽くなって今にも浮かび上がりそうでした。ずっと探していた冬虫夏草を見つけられたことがうれしいのです。」(うろ覚え)

「照りつける太陽の暑さも、苦になりません。この小さな冬虫夏草が、完全に掘りだせることができるよろこびのほうが大きいのです。知らない世界を見ようという気持ちがいっぱいです。」

人が持つ好奇心探究心は本当に不思議だ。一体何のために。この熱さが自分に欲しい。
最後に、若い読者のなかから将来のキノコ研究者が出ることへの期待をこめて結びとなった。ラブストーリーとして読むのが正しいと思う。

# やっさん 『僕の作った、マヨネーズと生クリームを混ぜただけのソースを「何これ、クリームチーズみたいや!」と無邪気に感動していたのが印象的でした。』(2004/12/26 1:53)

# あらき 『読まれると思って書いた。。 いや、あれはすごい発明だぞ。』(2004/12/26 2:4)

# 『最近、小説を読んでると言ったが、 実は、松岡氏のサイトを見て読み始めた。 よく、一日一冊も紹介できるなと思う。』(2004/12/26 23:19)