日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

東北旅行・田沢湖

夜から空が晴れはじめ、寝袋にかけたシートをずらすと天の川まではっきり見えた。そのうち待合室の屋根にたまった夜露が落ちてきて、ビシビシ顔に当たるから、さいごに深呼吸して外の新鮮な空気を胸にためた後、ビニールをかぶる。

今日の本命は、何かで読んだ「好きな温泉投票・第一位」の秘湯・乳頭温泉。予定上、十和田湖の後になった田沢湖は「またでかい湖か」という扱い。それでも、観光客用のきれいなトイレはあるだろう、という夢も何もない期待をしながら向かった。

写真の右、点字タイルと待合室の間の50センチくらいのスペースに寝袋をしいた。0時すぎ、駅員が待合室の鍵を閉めに来たが、じっと死んだふりをしていると見逃してくれた。- 赤淵駅

拡大図。いい表情だ。寝る前よりも疲れている。

けっきょく田沢湖はいいところだった。乳頭温泉へはかなり山を登ることになる。しかも、昨夜は寝た気がしない。水牢で水責めにされていた。湖を見ながら休めるところを探そう。田沢湖観光の中心から外れているせいか、創価学会など避暑のための大きな建物が道から離れて建ち、湖畔の道はきれいな並木道になっている。湖の方を見ると、フィルターをかけたように空と水が溶けている。水際に遊歩道があって、僕の同類がテントを張っていた。ほんとは昨日のうちに着いて、彼と同じようにしたかったんだけどな。夜明けの湖は良かっただろう。僕とは大違いだ。

たしかに、昨日の夜はひどかったし、このあと10キロ山を登ることになる。でもなんとかなるだろう。最後には、良い一日を終えられるはず。今朝の自分は立ち直りが早い。ハンドルにかかったコンビニの袋には、途中デイリーで買った弁当が入っている。表示されたカロリー量で選ばれた「得とく弁当」1040kcal。弁当ごときに、この信頼と安心感はなんだろう。ここまでの道中も同じだった。空腹で動けなければ食べる。寒くて動けないときも食べれば暖まる。疲れもとれる。そして、悪天候や夜間、先へ進むことへの不安や恐れも、どういうわけか消えてしまう。心と体はセットでうまいこと(都合よく)仕事してくれている。

この写真が気に入ったから大きいんじゃなくて、大きさのわりにデータサイズが小さいかったから。そんな情報に乏しい場所だったから、脳みそも処理にリソースを食われず休めたのかな。田沢湖

朝食会場を探して走りながら見るのは、どちらかというと単調な風景で、きれいだけど特に目を向ける中心がない。「湖が変な色をしているだけともいえる」と先生。弁当を見て期待をふくらませよう。ハンドルの下で揺れるコンビニ袋をチラチラ見てはニヤける。

弁当、寝袋、自転車があればどこでも行ける。さらに今は、降りると足が痛むので走り続けなければならない。最低限の目的意識も備わって、珍しく迷いがない。