日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

「自然農法」にチャレンジ(職場の広報に寄稿)

M学園の前の道を下ると右手に広い畑があります。畑の真ん中に小屋がいくつか建っていて、その奥の約一反(10a)をお借りしています。右手(西側)には、機械で作ったような正確できれいなウネが並びます。パート職員Kさんの作です。しかし左側は「大丈夫かな」と思うくらいのガタガタで大ぶりな「山脈」が立ち並びます。雑草も生えて・・生えるは控えめですね。しっかり「茂って」います。私とメンバーの合作です。

「晩ごはんは何かな・・」畑仕事が一段落し、夕暮れに照らされる里山を眺めながら家族の待つ家へ。日本人の原風景だと思います。三十を過ぎ中年にさしかかると、いつかは畑や田んぼをやりたいな、とぼんやり想像することがありました。ありがたいことにその機会を頂けました。

家庭菜園の入門書を買ったけれど、ほとんど土を触ったこともなく、Kさんに頼って言われるまま、耕うん機を走らせたりウネ立ての練習をしたり。ウネは難しくて1つ立てるのに半日かかっていました。この2つの作業は大切で、すべて終えないと種や苗の一つも植えられない。慣れてくると農作業は楽しいものになりましたが、心配も増えてきました。大事な2つの作業は難しく、当分職員の仕事になります。さらに、作業中はその場から離れられなかったりして、指示したり共に作業するといった支援がほとんどできません。

手仕事班の「畑事業」の目的は①工賃の保証と②仕事の創造です。ウネ立てや耕うん機が上手くなっても、職員が時間の大半をそれに費やしていて、給料を上げられるような価値ある商品を考えられるでしょうか。また、メンバーから離れて関わる時間もなく、利用者のやりがいのある仕事を創れるでしょうか。やればやるほど目的から離れていく感じがします。しかし梅雨が開けて爆発的に生える雑草に追われて、深く考えることもなく時間が過ぎていきました。

自分ではできないけど農業の本をたくさん読みました。軽い現実逃避です。「砂漠で農業」は大変そうですが、虫や雑草がなく寒暖の差で味がよくなるという逆転の発想だとか、面白いですね。そんな最新の技術とともに、自然と共生する持続可能な「新しい」農業の世界もあります。中でも「奇跡のリンゴ」で知られる「自然農」の世界には憧れましたが、奥が深くて難しそうでした。

それは(流派ごとに違いますが)無農薬・無化学肥料はもちろん、有機肥料も無し、耕さない、除草しないという、農業の「常識」と真逆の考え方です。日本の土壌は植物が育つのに不向きだと言われるけど、森は豊かで空き地はあっというまに背丈以上に草が茂ります。森は広がり土は年々肥えて、草木は丈夫で病気もありません。それを畑に応用し、自然の邪魔をせず少しのお世話をすることで豊かな畑を作るのです。

昨年は猛暑で草に苦しめられました。ふと「除草が要らないなら自然農は楽かな」と思いました。(実際は最低限草を取るし楽でも無いのですが)そこから妄想が広がっていきます。毎年ウネを作らなくてもいい、耕うん機も使わない、お金のかかる農薬・肥料も要らない。そして、野菜は農薬や肥料に甘やかされず自分の力を引き出して健康に育ち、食べる我々にとっても安全でおいしい物になります。

発想を変えるとメンバーの仕事が変わっていきます。「耕うん機を使えず、ウネも作れない」だったのが、スコップやカマなど単純な道具を使えるようになればできる仕事が増えていきます。受注作業から農耕に来たばかりでなかなか好きな仕事がなかったM・Mさんは、大きなスコップを少しづつ練習し今ではウネのための大きな溝をまっすぐ掘れるようになりました。最初は手が汚れたり土を踏むことさえ嫌がったT・Tさんにも、刈草を運ぶ仕事を続け、一輪車を押して畑の中に入っていきます。

常識にとらわれず勉強を続け、メンバーにとってやりがいのある仕事を創造していきます。