日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

権利条例・磁気ループ

メインの会場の机を並べる。30人座れるように。車いすが来るからゆったりと。そして、お互いの顔が見えるように。

真ん中がやたら広い円卓になった。2日目からは広い会場での議論になるが、僕には出る幕がないので聞いている。3日目は、パソコンを打ちまくっていた。数えたら13,000文字打っていた。聴覚障がいのある人への「パソコン要約筆記」のつもりだった。要約できないので、聞こえたものを打つ。2日目の終わりに、会場に意見を求めた時のこと。

「わたしは難聴で発言が聞こえにくい。ジキループがあれば使いたい」漢字は『磁気』ループだと思って、当たってたけど、何のことやら分からない。

「聴覚障がいだと伝えてあるのに、なぜサポートがないのか」資料が揃ったのが、事務局が徹夜を重ねて出発前日だった。すべてボランティアで、僕みたいな「ネコの手」も借りる心許なさ。サポートを入れる余裕がなかった。そこにいる介助者が何とかするんじゃないのかと思った。

でも、一般的には「情報保証」が不十分な会議だと見なされる。「インクルーシブ社会」という趣旨だけに深刻だ。ぼく以外の主催者側の人たちは、かなり慌てている。東京あたりじゃ、クレームが出て、まともな会と認められないそうだ。


読谷村の「象の檻」跡地で、ゴルフの練習場がある

役場の人が、しばらく探し回った後、「ジキループというのはありません。○○さんが言うので間違いないです」と断言した。いつか、市が主催のシンポジウムに来ていた、要約筆記ボランティア4人組2セットを連れてこないとダメなんだろうか。手話通訳者も。聴覚障がい者のための、プロジェクターの透明シートに手書きで要約文を書き込む。客席に「要約筆記者席」というロープが張られ、モノトーンな服装のベテランボラさんが控える。僕はその後ろから見ていた。ベテランさん(これは荒木主観)にも緊張感がただよう。よりにもよって壇上では、福岡寿さんがしゃべりまくる。業界一のマシンガントークに必死で対応する。バリアフリーの道は険しい。
ユニバーサルデザインに詳しい方がいたので聞いてみる。「ちゃんとした要約筆記を呼ぶ費用で一つ会議ができる。行政主催でもないと無理」手の空いた人がパソコンで打てばいい。それで同じことができる。これは反語で、隠された意図は「なんでやらないの?」

プロジェクターで映し出し、参加者の誰もが見られるようにすると、別の効果が現れる。議論が分かりやすくなる。誰にとっても。バリアフリーを目指して、ユニバーサルなデザインにもなっている。


http://www.aizunpo.or.jp/ud04/top/ud-bf.htm』より引用しました m(__)m

もう一つ、面白い効果がある。とくに、僕みたいな下手な要約筆記者のとき、司会は前もって会場に伝える。「発言は聞き取りやすく、ゆっくりめにお願いします。また発言の前に名前を言ってください」この制約は要約筆記のためだけじゃない。分かりやすく、成果を生みやすい会議の条件に近いと思う。(福岡さんは「講談」に近いので、ゆっくりしゃべれ、とは言いませんw)字幕によって議論の展開が追え、言葉を選んで、より短く分かりやすい発言になりやすい。

そういえばジキループとは何だった。マイクの電波を拾って、専用の補聴器をダイレクトに鳴らす信号を出すアンテナみたいなものらしい。さっきみたいな夢は乏しいけど、あっさり課題はクリアされてて、頼もしいテクノロジーだと思う。ふと「マイクとスピーカーだって『情報保証機器』じゃないか」と気づく。スピーカーの位置が、天井か耳元かという違い。

バリアフリー→②ユニバーサルデザイン→③インクルーシブ社会(または態度、意識)という流れを考えた。「ゆっくり話す」周囲の意識が変わることで共存できる。3つは同時進行だけど大まかな段階はある。

でも分かりにくい。ヒトは、もっともコミュニケーションと協調が得意な生きもののはず。相手の状態を察知したり、それに合わせて表現を変えたりするのは、基本的な能力だと思う。障がいかどうかは、「社会が、現状のしくみに乗らない人たちを区別するあいまいなボーダーライン」という考え方がある。場所や時代、技術によって変化する。(つづく)