日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

福祉的に『トムは・・』

『トムは真夜中の庭で』について内容をぼかしすぎたので反省。「時間旅行のファンタジー小説」という紹介よりも深い内容がある、人の人生についての何か、と言いたげで終わらせてしまった。数日おいて頭がはっきりしてくる。考えていたのは、トムは良き「介護者」だ、ということ(ひどいなあ)。深さに見えたものは個人的な話の飛躍だった。
トムが経験する様々な時間は現実なのか夢なのか。1度読んで分からなかった。でもバーソロミュー夫人にとってはどちらも同じもの。認知症のお年寄りには、現実の時間からだんだん離れて記憶の中のある時代に生きる人がいるそうだ。年寄りの感じ方に寄りそえば落ち着くことも多い。時間という絶対的なものからすれば異常な認識だけど、その個人的な時間を否定すれば症状は悪くなる。個人的な時間にまわりの人間の現実が振り回されれば、それは「ほぼ現実」だと言ってもいいんじゃないか。


記事と関係ないマコンデ美術館の彫刻です。すごいねえ

時間を、とどめることのできない絶対的なものだと思うと、この本はSFになる。「現実世界」というのはもっとあいまいで、個人的な世界と他人の個人的な世界と、物質的な環境との関係だとすれば・・書いてて分かってない。ともかくトムは、年寄りの行き交うあらゆる時代と人格に共感し寄り添っている。えらいやつだ。福祉の仕事をしていて、これ以上に「現実的な」物語はないと思う。

連休で3日仕事から現実逃避していると立派なことが言えるな。