日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

『スペースバンパイア』

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TVをつけると懐かしい「新スタートレック」のピカード艦長が出ていた。主人公らしき男にきつい皮肉を言って困らせている。例のコスチュームを着ていないから、ホロデッキで遊んでるところか。それにしても下品な笑顔だな艦長のくせに。

次のシーン。不意に麻酔薬を打たれ気を失った艦長は(すでに違うと気づいたけど、艦長のイメージが強く離れない)自分にとりついた女エイリアン(エロという設定)に体をコントロールされ、主人公を誘惑し始める。

「あなたを愛しているの。」艦長!
「私はあなたの理想のオンナ」ハゲなのに!
「もっと近くへ来て。あなたが欲しい!」
もっと仕事選べよ、パトリック・スチュワート先生。

髪型で役作りできない制約のせいで、僕の中では艦長のままである。正義感に満ち何にも屈服しないはずの艦長は、さんざん恥ずかしいセリフを言わされ、自分から進んで男と濃い目のキスを交わしたあと死んだことにされた。さらに、女エイリアンの、筋にはあまり関係の無い目的のために、特に必要もなく、死体の鼻と口から何リットルという血と体液を噴き出す。体液抜けて干からびて、用がなくなったので出番終了。

こうやって書くとクズ映画に思えるかもしれないが、「下らない」「意味のない」シーンがいちいち面白い。吹き出た血液が人間になるのもCG抜きの相当凝った映像だった。とくに必要はないけどね。調べると、艦長の役は途中から出てすぐに死ぬチョイ役だった。短時間で目を背けたくなるほどの印象を残した艦長も大したものだが、名役者と呼ばれるこの人の魅力を血の一滴まで絞りつくした点で監督もすばらしい。もともとホラーを撮っていた監督だそうだ。

「作っている当人が、自分が何を作っているのか分かっていない」という切れ味のあるレビューを見つけた。半分から見始めた僕にとっては、強烈なイメージを無秩序につないだ悪い夢のようだった。それでも最後まで見終え、流れた血の量とロンドンを埋めつくすゾンビの数のわりに密かな「すがすがしさ」さえ感じた。

映画通の視点はするどくて、映画の目的を「エロスとタナトスの密接な関係を描いた・・」と書くレビューがあった。

『プリシオン銀河・SF映画評』

フロイトの心理学なんかを出して来てすごく面白い。この方の言うとおり、たぶん映画を貫くテーマは高尚な何かなんだろう。原題も「Life Force(生命力)」というもので、中身のB級エログロゾンビ映画を感じさせない。しかし高尚な目標も、監督の常人が及ばない想像力と天性の悪趣味によって変形していく。結果、理解に苦しむお下劣映像が出来上がるわけだが、(途中)

女エイリアンに振り回される冴えない男が悲しく同情を誘う。エイリアン本体の居ないところでは威勢のいいことを言うが対面するとメロメロで全戦全敗。あ、一度だけ我に返ったことがあった。

女の宇宙船に連れ出されようとしていた主人公を助けるために相棒が駆けつけた。相棒が敵の本拠地にたどり着くまでが大変だった。大火災のなかを車で走りぬけ、ゾンビに囲まれ、立ちふさがる小ボスが「恐れるな、まっすぐ向かって来い」というから剣で突くと何のヒネリもなく即死し呆気にとられたりした。間一髪間に合って主人公は我に返り、有効な武器である「剣」を手渡すことができた。お前を救えるのは俺しかいない、そんな自信に満ちた表情が、みるみる緩んで半開きの口のまま呆然と空を見上げる。

「意味ねーじゃん!」(心の中で)

この相棒の表情がすべてを語っている。観客の心と相棒の気持ちが今、一つになった。