日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

オペラ座の怪人

問題作「オペラ座の怪人」の感想を書く会・会員No.1

(感想なんて人それぞれだし、ぼくは「怪人」の原作すら知りません。ファンの人は読まないで下さい)

三好イオンで見た。部屋がたくさんあるシネコンでは「吹き替え版」と「字幕版」を別々の部屋に分けることがある。とくに「タイタニック」など人気作品はそうなる。今回のは「超」話題作だとを聞いたから、もう1部屋「ミュージカル版」があったのかもしれない。受付混んでてうっかり間違えたのか、と思った。普通のに変えていいですか?

始めの20分は驚かされるシーンの連続で幸せだった。しかし、いいかげん普通にしゃべれ。「主役が居ないぞどうしよう」「クリスティーヌでいいんじゃない?」こんな事務的な会話は歌わなくていい。ちなみに、学校に怪人ファンがいたので聞いてみたら「ミュージカルだからしょーがないでしょ」と返された。ミュージカルには万全の体調でのぞまないといけない。この日は昼間外を動きまわってレイトショーに行ったから、疲れた頭に劇場の音響で増幅された歌が鳴り続け、すごく消耗した。

ゴルゴ13」に登場した尋問の専門家(女)が、鍛え上げた肉体も大音量による拷問には耐えられないわ、と言ってニヤリと笑った。ゴルゴにヘッドホンをかけさせ音量のダイヤルを最大に上げると、あのゴルゴでさえ辛そうに顔をゆがめた。ぼくも(?)歌の最中でつい意識を失い10分ほどで目を覚ましたが、まだ歌は続いていた。

字幕担当者が、細かいセリフ回しを聞き逃さないように、スピーカーや大きなヘッドホンに集中している姿をイメージしてみる。今作の担当はおなじみベテランの戸田奈津子さんだ。その戸田さんが、鉛筆の頭を噛みながら怒ったように原稿用紙にセリフを書きなぐっている。(今どきワープロだろ、は置いといて)

突然舞台に現れたファントムが歌う愛のメッセージに、クリスティーヌが答えるシーンで。

字幕『さあ、始めましょう!私たちの情熱のプレイを!!』

満員の劇場で何を始める気だ?英語に自信はないけど「プレイ」は違ってると思う。いや、カタカナにしただけだから間違いじゃないけど「意味が変わってしまいます(ラーメンズ)」。やっぱ「劇、ドラマ」とかじゃないかな。もし本当に違っていたとしても、戸田さんを責められない。ゆっくりした甘ったるい歌ばかりだから聞き取るのはラクかもしれない。でも内容はほとんど無くて、同じことの繰り返し。「顔を隠すために〜マスクで顔を隠した〜♪」みたいな(ちょっと脚色)。これじゃ技術と経験を生かす余地もない。どうせ客は読まないだろう。翻訳家としての仕事なんて、しょせんプレイなのよ。悲愛のファントムといったって、仮面プレイに緊縛プレイじゃない。

「the point of no return(あとに引けない、戻れない限界のところ)」という歌詞が後半によく出てくる。クリスティーナが「あなたと結ばれるのは運命だったの。もう元には戻れない。どこまでも一緒に行くわ」と歌う。記憶違いかもしれないが、問題なのはこの歌を別々の相手に向けて使ったこと。劇中に突然現れたファントムに対して歌い、それから30分もしないうちに、助けに来た貴族に寄り添って歌う。置いてきぼりのファントム氏からすれば「戻る場所が両端に一個づつ(オレと貴族)あったら歌詞の意味ないじゃん!」ファントム残念!同情する。

ファントムは当時のフランス人の悪趣味と偏見の被害者であり「ゆがんでいるのは心なのよ」と全否定されて救いも何もない。かわいそうだ。ファントムよ、そう腐るな。純粋な心の持ち主から言われれば傷つくのも無理ないが、クリスティーナはそうじゃない。ありゃかなりの悪ですよ、ええ。君のマスクは手のひらサイズで十分だが、クリスティーナは全身がマスクで覆われているから分からないだけだ。クリスティーナの幻影に振り回される健気な男たちの悲劇、という見方のほうが僕は理解しやすい。本当のファントム(幻影)はクリスティーナじゃないか、と。

何十年も寄り添った妻の墓にモンチッチ人形を供える貴族。一度は殺す気で戦った敵であるファントムの思い出の品だ。妻の心を一番知るものとして、自分が最後まで半分の愛情しか受けられなかったことを分かっている。そんな理不尽な妻を恨むこともせず全てを許し受け止めている。ロン毛の嫌なやつだと思っていたが、実にすばらしい男だ。泣かせる。

クリスティーナの墓碑銘に「よき母であり、よき妻であった」と書かれていたが、あれは貴族の精一杯の皮肉だと思った。苦労したと思うよ。ヒゲ真っ白だったしね。

なんでこんな怒ってるんだ僕は。

# あいこ 『私もそのうち感想を書きます。 それにしても、映画よりこの感想の方が面白いって、 どれだけダメ映画だったか今更ながら実感。』(2005/2/20 2:20)

# あらき 『そう、これ以上犠牲者を出さないためにも。 上映中やっさん笑ってたから自分と同類だと分かったけど、もしあいこさん大感動だったらどうしようと思ってた。上映後となりを見たら2人ともグッタリしてたから安心した。』(2005/2/20 7:36)