日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

むしろハーベイ・カイテルが「オバサン顔」

遅く起きて、歩いて学校へ来た。外は寒くて乾燥している。急いで顔を洗ってそのまま出てきたので顔の皮膚が乾いてパリパリになった。

AI棟地下の扉まで来ると、隣の建物に掃除のおばさんが居るのがガラスごしに見えた。カードキーを探しながら振り返ると、おばさんは床にはいつくばって何か探している。いやちがう。AI棟と向かい合った「開かず」の扉と地面の境目に注目して動かない。何か見つけたな。

自分の学部関係の建物を担当する清掃のおばさんを何人か知っているが、そのうちの一人でいつも少し怒ったような顔をしている。欧風の彫りの深い風貌で印象に残る。俳優のハーベイ・カイテルに似ていると思う。映画に詳しいわけじゃないけど、この人はギャングや狂人や悩める中年役でよく見かける。いつも眉間にシワをよせている。

卒論中のガーデン4Fでパソコンに向かっていると、肩の上からモップが飛び出してきた。体にのしかかるようにして広いテーブルにモップを届かせる。左が終わると右、僕のことは見えないようだ。荒々しく机を掃く腕をたどって顔を見るとハーベイ・カイテルだった。

僕の前のフロアで清水ゼミによる「ゼミ・メンバー対抗ロボット相撲トーナメント」が始まった。ホワイトボードに対戦表が描かれ、入賞者にはUSBメモリが贈られる。狭いフロアに土俵として直径2メートル位の円が描かれた大きな紙がしかれ、周りを情報科のエンジニア系が10数人取り囲んだ。清水先生「バッテリーを電圧が高いのに変えたから気をつけて。焦げたニオイがしたらすぐ教えて」緊張が高まる。

ロボットを制御するのは難しそうだ。3年生らしいのによくやっている。最初から動かず不戦敗、オウンゴール的なもの、からみあって円運動を始め仕切りなおし。けっきょく決勝は当初からの優勝候補同士の対決となった。優勝候補の一人は2年前の体育で僕と卓球のペアを組んだ男だった。むこうは覚えてないだろうけど。粘りの卓球の男だったが、ロボでもそれは変わらず堅実に相手のミスを誘って勝ち上がってきた。

ふと横を見ると、モニタの陰から水色の帽子がのぞく。例の彼女がモニタのすき間から身を乗り出している。モップの手を休めて観戦しに来たようだ。観戦にしては相変わらず眼光がするどいな。試合では、卓球の相方は奮わず、開始前に接触不良が連発し修理のためペースを崩されてしまったようだ。おばさんはニコリともせず土俵をにらみ続け、勝負が決まるとプイとその場を去ってしまった。

ただ好奇心旺盛なおばさんというだけでなく、おそらくはスゴイ経歴を持っていると思われる。今書きながら、時々中京ネットワークに攻撃をしかけるハッカーじゃないかと想像してみた。優れたハッカー(クラッカー)は捨てられた書類や直接話すといったアナログな手段から情報を集める、と何かの本で読んだ。また、眼光の鋭さから、殺し屋、という線も捨てがたい。それは後日。仕込みモップ。

彼女のおかげで、残り少ない大学生活にハリが出る。