日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

『へんないきもの』

早川いくお『へんないきもの』(バジリコ社)からの引用です。
早川さんの素敵な文章をコピーすることで、僕もそれに近づきたい。
みんなの人気者「ラッコ」の解説文(p.118)から。

かわゆいどうぶつさん
遠い海からのお客さん〜ラッコ

 森進一の歌で有名なえりもみさきに、ある日3頭のかわいいラッコちゃんがやってきてみんな大よろこび。でもとてもこまったことがおきたんだ。ラッコちゃんは、えりもの人たちが海でだいじにそだてていた高級ウニ4トンを、ぜんぶぱくぱくたべちゃったんだ。3頭で4トンもたべるなんて、すごいね。えりものひとたちが損したおかねは4千万円。都内のマンションに愛人がかこえるね。おじさんたちにとっては、かわいいラッコちゃんたちも害獣なんだ。がいじゅう、ていうのはわるさをするくそケダモノっていみだよ。
 でも退治はできないんだよ。どうしてかって?ラッコちゃんは国際保護条約で守られているし、それにかわいいラッコちゃんをいじめたりしたら、「ラッコちゃんにひどいことしないで」って怒ったりないたりする人がたくさん出て大さわぎになってしまうんだ。だからえりものおじさんたちは健さんみたいにじっとりふじんにたえるしかないんだ。でも、ほんとうはラッコちゃんを無反動砲で粉砕してやりたいと思ってるかもしれないね。ふんさいっていうのは爆発してこっぱみじんになっちゃうことだよ。何たって4千万円だものね。
 えりもの春は何もない春です、ていう歌詞がシャレにならないね。


他のページも下らないが笑える。ラッコちゃんについては、もちろん笑うけど、もう一段深い。人の都合に合わせた保護条約を皮肉っているけど、漁師に全面的に味方もしない。人の都合に関係なく自然はそこにあり、じつに多様な姿や生態がある。本には60以上も、ユニークでフザけた生態を持つ生物が紹介されている。

他人を笑うとき、そいつの変なところや普通じゃない特徴を取り上げるけど、生き物たちは何百年もそうやって生きてきた「本物」なんである。生協で立ち読みしながら笑ってる場合じゃない。狭い了見しか持たないことを、水や泥の中から笑われているのは僕のほうかもしれない。

と、1500円の衝動買いを後悔しそうな自分に、言い聞かせる。「これは名著だ!」興味ある人は土ゼミ室へ。