日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

「裁判記録の閲覧」体験記

メンテナンス主義で3  

 とある役所に「裁判記録の閲覧」に行った。入口で警備員の荷物チェックを受けて、小さな部屋に通されて、そこで書類を読む。個人名などに黒いテープを貼って伏せられている。ここまでが長かった。最初に電話したときは「申請しても許可されないかも。何ヶ月も待たされるかも」と渋い対応。役所に行って、その裁判の関係者「の関係者」ということが伝わると話が進んだ。「理由書」を2枚作って付けて申請した。3ヶ月半が過ぎて、やっと連絡が来た。 

 「刑事」裁判の記録を見るのはややこしい。まず「保存期間」を過ぎていないこと。多くの、実刑になるような事件は5年が多い(重い罪ほど長くなる)。さらに裁判後3年過ぎると「原則だめ」になる。なのに早めに申請すると「未整理のため」何ヶ月も待たされるという。今回は3年過ぎていたが、裁判の(遠い)関係者であることと、「更生」が目的であることで通った。刑事訴訟法53条を読む。

何人も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる但し、訴訟記録の保存又は裁判所若しくは検察庁の事務に支障のあるときは、 この限りでない 

・弁論の公開を禁止した事件の訴訟記録又は一般の閲覧に適しないものとしてその閲覧が禁止された訴訟記録は、前項の規定にかかわらず、訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があつて特に訴訟記録の保管者の許可を受けた者でなければ、これを 閲覧することができない (以下略) 

 読んだ人を全員「法律嫌い」にさせるパワーがある。「誰でもOK」と見せかけて、実際は「原則NG」だし、「事務に支障あり」と言えば、断ろうと思えば全部断れる。対照的に、裁判中の「傍聴」は住所も名前もオープンだ。終わると急に閉じてしまうのはなぜか。調べると、憲法82条の「裁判の公開原則」にそって傍聴はかなり自由で、記録の公開もそれに基づく。ただ、その趣旨は「知る権利」のためよりも「権力が公正に行使されているか」監視すること。過去の「密室裁判・暗黒裁判」への反省からだ。なので、裁判が終わると出さなくなる。あまり中立とも言えない「検察官」が記録の扱いを判断している。昔は裁判所内に「検察部」があって事務処理を担当していた名残りだそうだ。2007年に、作家が鑑定医の調書を盗み見て、それを元に本を書き、メディアへの記録の公開は一段と厳格になったという(草薙厚子「僕はパパを殺すことに決めた」)。 

 2020年に日本弁護士会が出した意見書を読んだ。上の条文の一語一句すべてに否定的だった。閲覧者の守秘義務を厳格にすることを担保に「原則は公開」という改善案だった。検察でなく裁判所が保管すべきとも。今年になって、神戸の事件はじめ重大な事件の記録が破棄されていたことがわかった。弁護士会の意見でも、歴史的に重要とされる「特別処分記録」は「公文書扱い」にすべきで、その指定に第三者が入り「公文書館」で保存する提案がされていた。遅かったわけだ。 

 もう一つ、実際手続きしたことで判明した「裏の事情」がある。「黒テープ作業が大変すぎ!」書類は片面摺りとはいえ厚さ10センチ近い。数百カ所(おそらく千超える)切り貼りして、一つの漏れも無いように肉眼でチェックする。「何としてもやりたくない」気持ちは分かる。 人の仕事じゃないと思う。書記の段階でデジタルで情報が分類分け・タグ付けされていたら、あとは閲覧者の属性に合わせて微調整するだけだ。