北九州2
「対岸の見える水辺」にはマジックがある。川ではなく海で、小さな町があるといいと思う。
尾道、瀬戸内の島々、宮島、関門海峡、ここ洞海湾もそう。海辺には必ず人の歴史があって、今はたいてい廃れている。海の底は見えない。深い海を挟むと、両岸では違う時間が流れているような、見た目は同じでも違う人が住んでいる、気がする。時間と空間の感覚は、歳くうほどに枯れて性能が安定してつまらなくなる。それがゆるむのかな。
若松の港を歩く。どこかの県庁ビルみたいな古いレンガの建物がある。「入口はこちら→」とあって公開されてるみたい。「旧古河鉱業若松ビル」という。
入ると絵の展示会をやってる。「どうぞどうぞ見て行ってちょうだい」あれ、記念館は?一部を貸してるのかな。聞くと2Fにも上がれるらしい(まだ分かってない)そうそう2Fの窓に人影が見えたんで来たんだ。そこが展示室とかかな。2Fへ行ってみよう。「もう行くの?お茶でも飲んでいきませんか?」遠慮して奥のドアから出ようとすると、もう一つ受付があって「記帳されました?まあまあ名前だけでも。私たちの実績になるしお願いしまーす」
『曹亜鋼水墨芸術学院』という水墨画教室の作品展でした。奥さまたちと世間話してやっと2Fへ。道着の子供が階段を降りてくる。2Fは空手教室だった。この歴史的建築は市民向けの貸しスペースになっている。海の見えるギター教室もあった。面白いなあ。
再び水墨教室を通りぬける。お言葉に甘えてお茶を頂くことにした。コーヒーにお菓子と、おみやげのアンパンも出てくる。関係者からの祝いの品らしく「カバンに入れて持って帰ってね。ないしょよ」あいさつして外に出ようとすると「アンパン(カバンに)直しといてね!」と念を押された。
若松は筑豊炭田の繁栄の中で積み下ろしの拠点として栄えた。石炭仲仕「ごんぞう」の解説を読む。今はクレーンで船にどんと載せるものが、当時はハシケ船を付けて、ゆれる巨大なハシゴの段に一人づついて、バケツリレーのようにして膨大な荷を積み下ろしした。閉山して8万人の失業者だって。町は様変わりしたけど、押しの強い奥さま達と話すと港町の人間のたくましさを感じるな。
若松駅近く「カトレア」の何もついてないタコ焼き。水の量まちがえたような。外はカリッとで中はトローっていう世間に逆行する。勇気あると思った。じつは冷えてもおいしくて、他に似た食べ物が思いつかない。
当直明けで格安バスで、今はいいけど後で来そうな睡眠不足を補うために図書館へ行く。若松図書館は小さいけど窓から遮るもののない270度の眺めがあって、洞海湾が見渡せる。図書館ファンのランキングがあればかなり上位に入ると思った。
- 作者: ハロルドハーツォグ,Harold A. Herzog Jr.,山形浩生,守岡桜,森本正史
- 出版社/メーカー: 柏書房
- 発売日: 2011/06
- メディア: 単行本
- 購入: 8人 クリック: 937回
- この商品を含むブログ (31件) を見る
動物保護活動ではポスターの動物の目が大きいほど寄付金が多く集まる。パンダは毛の色で目を大きく見せて勝ち組に。「幼児」の作りをした動物がウケるそうだ。オオサンショウウオだと駄目だろうと書いてある。読んだり寝たりしてたら、本来の目的がどうでもよくなってきて、けっきょく1時間遅れた。
次の日は小倉のカプセルに泊まる。6時に目が覚めて、まだ寝れると思って2度寝したら変な夢を見て、思いがけない人が出てきてあんなことやこんなことをしてるうちに寝過ごして30分遅れた。
朝食は奥さまにもらったアンパンを電車で食べた。カップケーキの紙の容器に入っているお菓子のようなアンパンで、かなりうまかった。袋取っておけばよかった。