日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

失われたユートピア・三重県菰野町ユーユーカイカン

京都へ行くという案もあった。それが、時間と予算の関係で四日市市の「超」スーパー銭湯健康ランド ユーユー・カイカン | 飲める天然温泉と大衆演劇」になった。ぼくらには分相応といえるけど、年頃の子どもが知らされたら一週間は親に口を利かなくなるくらいのダウングレードである。

結果的には京都なんかメじゃなかった。大宴会場にて大衆演劇が開演する午後7時から朝日が昇るまで、まわりが田んぼばかりで住民の誰も知らないうちに、建物ごとタイムスリップしている。「漂流教室」みたいに。時代は昭和で、カラオケはあった。朝5時にゲームセンターの床で目が覚めてレストルームに行くと、椅子も床もすきま無く人間で埋まっていたが、7時にカーテン越しの朝日で目が覚めると自分たちの他だれも居なかった。

京都は、立派だが死んだものを並べた博物館だ。ここでは「今」が昭和であり、昭和な人々が暮らしていた。ぼくらは「異物」としてそこに割り込んでいた。平成に帰りたいとも思ったけど、名残惜しさもあった。温泉も悪くなく、いい旅。僕のなかで「時間」旅行というジャンルができた。
夕方に湯ノ山温泉の名勝「蒼滝」を見て、裏道で戻るときは森の中でずいぶん暗かった。そして寒かったし、道を間違えて急斜面をはって登り、こんなところで「遭難するから戻ろう」発言まで出て、身も心も温泉に向けての準備ができていた。

四日市市郊外の田んぼの中にある。何度かそばを通りすぎた。通り沿いには無くて、田んぼを抜ける細い道を見落としてしまう。暗い水田地帯に、安っぽいネオンに包まれた全貌が現れてくるゴージャスさと「寒さ」は、実家四国のパチンコ屋に似ているが、その比ではない。300台入る駐車場が満車だ。白線外にどんどんあふれている。どんな楽しいことが待っているんだろう。

翌朝、駐車場に出ると夜は気づかなかったが「鯉のぼり」が吊られていた。相当な数だ。風が無くてブラーと垂れ下がっているだけ。繰り返すけど、朝日が出ると皆消えてしまう。ネオンが消え古びた建物のヒビが目立つ。もう少し早く来れば「千と千尋」の「日暮れの湯屋開店」シーンを見られた。

入館料は1,600円で馬鹿高い。それでも人が押し寄せる魅力がある。売りは順番に、源泉かけ流し温泉、毎日大衆演劇を上演、ダンスホール、そしてビンゴ大会もある。おみやげ屋さんとゲームセンターは分かるけど、なんでエリンギとか柿を一カゴいくらで売っているんだろう。八百屋もあれば電器屋もあって、炊飯器や洗濯機が台の上に積まれている。←じつは月2回の大ビンゴゲーム大会の景品でした。そのときは「ここならぜんぜん有り得る」と思ってた。

化粧品の実演販売、マッサージ機の試用会、どこもすごい人だかりだ。とりあえず何か食べたくて食堂兼宴会場に行くが満員で入れない。入り口に行列、列にもなってない、大勢が詰め掛けて中をのぞき込んでいる。はやくも、疲れたウンザリという感じになる。

入場券の通し番号でビンゴゲームをやっているらしい。人だかりは結果を見ているだけかと思って中に入ろうとすると、えらく怒られた。怒られる前に、小さい体育館くらいある宴会場を埋め尽くす群集を見て、いろんなことを諦めた(定員300人らしい馬鹿)。ゲーセンの横の机に座ってやっと一息つく。