日記など 2002年から

福祉の話題が多いです。東京都の西部・多摩地区が行動範囲です。

奇跡的に外出できた

この日は外出しようと兄と一緒に決めた日だった。豪華客船『飛鳥』が入港する日で、それが荒木家の次の住処であるマンションのベランダから見える。

でも前日まで体調が悪くて外出どころか車椅子に乗るのも嫌がっていた。昨日は今日のことを言える雰囲気じゃなかった。今朝はどうだろう。母はいつでも出れるように、兄が寝ているうちから着替えて待っている。目が覚めた兄のようすを見に行く。家族の誰も兄が行くとは思ってなかった。父は可能性0%と考えていただろう。残りの家族は順に、50%、20%、30%くらいだ。弟は、ダメなら一人で行くつもりだった。でも悪いのでいちおう聞きにいく。意外にも兄は意欲的で弟を見るなり言った、「はやく行こう」

『退院の日』の夢を見ていたんだとすぐ分かった。兄が行こうとしているのは今居るこの家だ。しかし、夢でもその気になっているなら久しぶりに外出できるチャンスかもしれない。「悪い悪い。すぐ準備するから待ってて」あとは信じられないほどスムーズに進んだ。車の乗り降りは一苦労だし、車内でも体が安定しないのでクッションに埋まるようにしている。でも兄は平気そうで、別のことを考えているようにぼんやりと外を見ている。この時はもう夢から覚めていて、「行こう行こう」とまわりが騒ぐのにだまって従っていたように思う。「意外と気を遣う」という母のコメント。

天気に恵まれた。本当に「恵み」だと思うくらい、この日だけが穏やかだった。(気象台のHPを見てみると、18日の前後は風が強いか曇っているかどちらかしかない。調べてビックリです。気温は低めながら日差しが暖かかった。) とちゅう散りかけのコスモス畑に寄り道する。

最初は元気だったが

部屋に着くと少し疲れが見えた。止まらずに窓のところまで行ってカーテンを開ける。船が見えた。10階の部屋と同じ高さの船が海を隠していた。「おおー」 しかし、車イスの兄には見えない。ベランダにイスを出しても落下防止の壁が目の高さにあってダメだった。せっかくここまで来たのに逆に不自由なことを思い出させてしまった。アセる弟がベランダのすみにあるエアコンの室外機を見つけ、そこへ兄をかつぎ上げることにした。

3人ともグッタリ

不安定なので姉と弟が両脇をかかえた。
あまりしゃべらないが、辛くもないようでぼんやり景色を眺めていた。「記念写真とるから待って」しかし、弟は買ったばかりのデジカメを使いこなせず兄は(姉も)疲れ果ててしまった。兄はベッドで少し眠って(ベッドが変わるとよく寝れないようだ。「(落下防止の)サクがない」と言っていた。)、弟が買って来たロッテリアを少し食べて暗くなるまえに家へもどった。